すべてが猫になる

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ストリート・キッズ/A Cool Breeze on the Underground (ねこ4匹)

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ドン・ウィンズロウ著。創元推理文庫

1976年5月。8月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員が、行方不明の
わが娘を捜し出してほしいと言ってきた。期限は大会まで。ニールにとっての、長く切ない夏が
始まった……。プロの探偵に稼業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッズが、ナイーブな
心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する。(裏表紙引用)


このニール・ケアリーシリーズはずっっっっっと読みたかったんですが、先日シリーズが完結したとの
噂を聞いてやっと1作目を購入。文庫にして1000円、たけーよ。。
なんだか知らないけれど読む前から気に入る本(意味不明)っていうのが時々あって、
これも例外じゃなし。読了後に堂々お気に入り本に加わる事となりました。

コミカルと言うには切なく、お洒落と言うには古くさい。
語り口は軽妙に、だけどニールの生い立ちや現在の境遇を彷彿とさせる「奥底にある哀しみ」が
身の程をわきまえ一線を越えるわけにはいかない「早くなり過ぎた大人」の解き放てない鎖のようで
痛々しい。少年は少年であって、自立心と社会的立場が相容れない。それでも感じる、
ニールと彼を取り巻く大人達の優しさ。このシリーズの魅力はここだろう。
ストリート・キッズとは我が国では馴染みは薄いが「子供のホームレス」。比喩に多々使われる
俳優や何かのキャラクターなどにピンと来ないのもどうしようもないが、逆にそれが
私の生活とかけ離れた想像もつかない背景や遠い国での現実の状況に思えて肩身が狭くなる。

それでも気に入って物語を楽しんでしまった。ニールの今後携わる事件や、グレアム、レヴァインとの
関わりによってどう彼が変化して行くか期待。
望むならば、タイトル「ストリート・キッズ」がもっと大きな、
「ニール・ケアリー」として看板を掲げられるように。