すべてが猫になる

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誘拐ラプソディー (ねこ3.3匹)

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荻原浩著。双葉文庫

伊達秀吉は勤務先の親方に大怪我を負わせて金庫の金を盗んでしまった。家庭もない、お金もない、
仕事もない。人生に絶望し自殺を試みるも失敗。そこへ逃亡用に選んだ会社の車放置中、見知らぬ
子供が乗り込んでいた。意気投合?した秀吉と家出した子供・伝助はあれよあれよと誘拐から
ヤクザや中国マフィアに追われる大騒動に!


あれ????
これ、めちゃくちゃ面白いよ!と会社で薦められて読んだんだけど。。。^^;;

同僚Rさん 「読みやすいし、笑えるし、ハラハラするし、最後は泣けるよー」
ゆきあや 「なんですって!?そんな完璧な本が!?」
とたくさんある荻原さんの積読本から(早く読めよ。。)一番最近買った本書に手をつけた次第。

正直がっかり。ユーモア系サスペンスが苦手だという自分の嗜好も影響しているのかと
思ったけど、それでも面白ければそれなりに褒めますしどこが面白いかは理解できるつもり。
とは言っても、「犯罪をコミカルに」という作風に馴染めないのは確かですが。。

いや、そんな事を書くと余程つまらない内容みたいですがそういうわけでもない。
確かに秀吉の語り口は「ぷぷっ」と吹き出す種類のものだし、秀吉が知らない事を
読者はたくさん知っている形式の小説だからして笑えると言えば笑える。
しかし、それは裏を返すと「先が常に読める」わけで、そこには斬新さも意外性も
全くなし。
このエピソードはもっとラストにうまく使えたんじゃないだろうか、とか。
あれだけ引っ張っておいてあっさり引き下がる敵側も肩すかしだし、とか。
最後の「泣かせ」は定番中の定番で「そう来ると思っていた」展開そのまんま。
これを面白い、という人がいるのは理解できるけれど、自分が今まで読んで来た
誘拐ものに比べるとどうもエンタメとしてもサスペンスとしてもどっちつかずで
中途半端な印象。だいたい、この中国マフィアは出さなくても良かった。
そして、秀吉も応援するには鈍過ぎてアサハカだし伝助も「賢い子」に作った方が
絶対可愛かったと思うんだよなあ。。

なんか全てにおいて惜しい。文章の楽しい作家さんなので、この人でなければもっと
悲惨だった気もするけれど。