すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

桃源郷の惨劇 (ねこ2.5匹)

イメージ 1

鳥飼否宇著。祥伝社文庫

そこはヒマラヤの奥地、桃色の花々に煙る文字通りの桃源郷だった。針金倫明ら日本人スタッフの
目的は、新種の鳥を世界に先駆けて撮影すること。古老が出した条件は一つ「神の領域を侵しては
ならない」だ。通訳はさらに、神とはイエティ(雪男)だと訳した。本当に実在する?半信半疑の
まま撮影を開始した直後、カメラマンが惨殺され、遠ざかる巨人の影と足跡が!(裏表紙引用)


数冊あれこれとここ数日で読んではいるのだがどれも記事にしたいほどのものでもなく
気が付いたらおっと、今日更新するネタがない。それならばと、まあ選ぶならばこれだろう、と
言う事で3冊目の鳥飼さん。書くからにははりきって行きましょう。
祥伝社文庫<中編の楽しみ>シリーズ(400円文庫のやつね)はそれほど当たりがないので
まあこんなもんだろう、と思う。中編で本格ミステリを書くのって難しいんじゃないだろうか?
プロットが少ないと冗長になるし多くてもまとまらない。謎解きの他に物語を盛り込む余地が
窮屈そうであまり読み手としても得意ではなかったりする。

しかし、本書は「謎解きの他に」の部分が楽しめる小説になっている。正直謎解きものとしては
お粗末にして手の内が見え見えである。作中作も「これだけのためにご苦労さん」と
揶揄したくもなる。好みでないわけではないのだが鳥飼さんがやるにはパンチが足りないように
感じるのは私だけだろうか。もっと他の部分で「光る」ものがある作家さんだと思うので。
例えば、こむずかしい異文化世界や野鳥の蘊蓄を素人にわかりやすく、雰囲気をキープしつつ
描く手腕は凄いし「こういう事やってみました」的なやっつけ仕事の印象は受けない。
変な物を書く人、という先入観ゆえかもしれないが。

ところで、探偵役の鳶山という人に見覚えがあるようなないような。「昆虫探偵」のわけがないから
やっぱり「中空」で1度会ってるんだろうな^^;。