すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

獄門島  (ねこ4.5匹)

門島――江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ……』瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が! トリックを象徴する芭蕉の俳句。後世の推理作家に多大な影響を与え、今なお燦然と輝く、ミステリーの金字塔! !(裏表紙引用)
23.5.5再読書き直し。
 
「本陣殺人事件」から9年、金田一が34、5歳の頃に関わった事件。戦友から「3人の妹たちが殺される」という遺言を受けて獄門島へ足を踏み入れた金田一。もう名前からして何か恐ろしいことが起きることが決まっているかのよう。横溝作品に必ず登場する「絶世の美女」や水もしたたる美青年の存在、そしてちょっと頭の弱いきゃぴきゃぴした3人娘。障子に記された読めない俳句を元に、次々と娘たちが俳句の通りに殺されていく。。やはり梅の古木に逆さ吊りされた花子が一番衝撃的。吊り鐘も横溝作品では強烈に印象づけられるモチーフだが、本陣を彷彿とされる物理トリックがこれまたみもの。歩く吊り鐘…祈祷所にこもる3人目の娘は殺されたいのかのツッコミ待ちのごとく。和尚の名言「きちがいじゃが仕方がない」はこの作品で放たれたもの。
 
犯人の正体については現代では手に垢がついた感があるが、当時は雷に打たれたほどショッキングなものだった。この事件もやはり戦争が生んだ悲劇であり、今では考えられない異常で「軽い」動機も、横溝作品の特徴のひとつ。作品中しつこいぐらいに繰り返される「きちがい」の言葉がここでも効果を生んでいる。何度読んでも読後ショックで呆然としてしまう鬱事件。間違いなく名作の一つである。
 
金田一が惚れた女、が出てくる作品でもある。