すべてが猫になる

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フランス白粉の謎/The French Powder Mystery (ねこ3.7匹)

ニューヨーク五番街の大百貨店<フレンチス>のショーウィンドウから忽然と転がり出た婦人の死体を
めぐり、背後に暗躍する麻薬ギャングと知能比べを演じるエラリーの会心の名推理。わずか数粒の
<白粉>と、リップスティックの中から転がり出たヘロインの<白い粉>の謎の真相は?(裏表紙引用)
国名シリーズ第2弾。


最後の1行まで犯人がわからないーー。
自分は昔からこういうのが好きだが、それはやはり本書の影響かもしれないと思う。
本書はトリックというより完全な「犯人当て」で、フェア・プレイを信条としたクイーンの
「真っ当さ」が如実に現れた作品と言えるかも。
死体は一つであり、特別奇を衒った演出は見られないのは本書がシリーズの中でも「地味」と
言われる由縁かもしれないが、「なぜこの人物だけが犯人足り得るのか」そして、
「ブック・エンドから検出された白粉から導き出せる真相」そこに焦点を絞り、
理論の積み重ねによって到達できる唯一の答えがこれである、その鮮やかさが魅力的すぎる。
奇抜なトリック、常人から外れた犯人の人物像、現代で見られる虚飾を排除し、
理論一点で勝負する理屈だけのショー。何度読んでも感心するばかり。

ただ、犯人を名指し出来ても、犯行を隠蔽するために犯人がとった行動、ここでひっかかってしまう
確率が高く、正しい犯人に到達出来る読者は現代人には少ないかも。。
時代性を鑑みれば、本書がフェアである事は間違いなくとも。

えーと、自分は本書は国名シリーズではお気に入り度は下位です。7、8番目くらいかな。
だって地味だもーん^^;良し悪しではありません。必読は必読。クイーンの出世作ですしね。