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殺人の門 (ねこ3.5匹)

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東野圭吾著。角川文庫。

田島は、裕福な歯科医院に生まれ育った事以外は平凡な家庭の少年だった。しかし、祖母の死、
両親の離婚、医院の廃業、「不幸の手紙」が届いてからというもの、田島の生活は一変して
不幸の一路を辿った。自分の不幸には必ず友人の倉持修が関わっている気がする。彼を殺そうと
思ったのはいつからだったろうか。進学、就職し成人してからも倉持は田島の人生に現れる。
人が人を殺す、その動機と経過とはーーー。


なんと救いのない、悲惨な人生を描いた小説だろうか。一人の情けない男の人生が600ページの
文量でのしかかって来る。最初は幼き少年の身に起きる不幸な運命と境遇に興味を持って
読み始めたが、もう半分も来ると読んでいるのが苦痛になって来た。
伏線は張り巡らされているし、重いテーマを扱っているのだがもう延々と同じ失敗、同じ行動が
繰り返されるのでだんだんこちらの気持ちがなにか悪いものに浸食されて来たような
そんな気分になるばかり。

さらに加えて、女性の人物像のなんと酷い事。「良い方の女性」「悪い方の女性」両方色々と
重要な役割で出て来る。
美人であり、他人に優しく、料理が上手。つつましい笑顔。そして人を見る目がない程度に
頭がよろしくない。随分と女性を軽視した、男性上位の理想的な女性像。
自分はそっちにばかり神経が行って読んでしまったので、本筋である倉持という男への
主人公の「憎悪」に共鳴出来なかった(小説として。実際に憎んだら怖い)。
主人公自体になんらかの人格的欠陥がある場合、「仕方がない」とまでは思わないが
「明日は我が身」として受け止める事が私には出来ない。

ただ、この長さ、内容で一気読みさせる手腕はもう東野圭吾だけのものだろう。
先へ、先へ。ページをめくる手は止まらない。この絶望の先に何が待っているのだろう?
ラストは正直期待しすぎて落胆したが、ずっしりとした読了感はさすがだった。
でも、好きじゃないんですこういうの。再読はきっとないな。。