すべてが猫になる

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クリムゾンの迷宮 (ねこ4.8匹)

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貴志祐介著。角川ホラー文庫

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る
奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ?傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを
映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨な
ゼロサム・ゲームの始まりだった。(裏表紙引用)


再読。

貴志祐介はやっぱりホラーだ。『青の炎』も『硝子のハンマー』も良かったが、やはり『黒い家』や
本作のような良書を読むとホラー作家としての別格の実力をひしひしと感じてしまう。
自分にとっては神様と言ってもいいくらい、彼の作品には惹き付けられてしまう。

本書は、かつて流行した「ゲームブック」が土台となっている。ちょうどそれが流行している
時代に、もちろん私も夢中になっていた。『○○○○の要塞』とかいうタイトルのゲームブック
一番ハマっていた記憶がある。自分は小学生だったかな。大げさでなく、通算100回以上は
やっていた。やはりそこは小学生で、正当な手段でゴールした事は1度もなかったけれど^^;
(全ての選択肢を読んでから進むとか、サイコロによる戦闘は放棄して勝った事にして進むとか)
そんな自分だから、本書に夢中にならないわけがない。
もちろん小説であってゲームブックではないが、主人公の選択したルートがまさに
自分があの頃体験したゲームの世界の恐怖と興奮そのもの。しかも、今でなら物語としても
楽しめるようになったはず。
ゲーム機に現れる陽気なキャラクターの不気味さ、違うルートを選んだ人間達との駆け引き、
人間でない何かになってしまったチーム、もうその恐怖は格別で、初読時はこんなに
面白い本があったのかと心の中で喝采しまくった。

この結末に不満な人は多いかもしれないが、私は満足している。
正直、このストーリーで「納得のいく解決」を持って来られたら私は興ざめしてしまいそうだ。
不満もあるけど好き、なんじゃなくて、この結末も含めて私は本書が大好きだと言っている。
さすがにもう100回も読んだりはしないだろうけれど。