すべてが猫になる

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悪魔の手毬唄 (ねこ4.4匹)

岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村。たまたまここを訪れた金田一耕助は、村に昔から
伝わる手毬唄の歌詞どおりに、死体が異様な構図をとらされた殺人事件に遭遇した。現場に残された
不思議な暗号はいったい何を表しているのか?事件の真相を探るうちに、20年前に迷宮入りになった
事件が妖しく浮かび上がってくるが…。(裏表紙引用)


正史の代表作の一つであり、私も大好きな作品。原作は読んでなくても、ドラマなどで
「親が観ていたから知ってる」という方は多いんじゃないでしょうか。
かく言う自分もその一人で、サスペンス大好きのビデオ録画マニアの母が毎晩のように
観ていた金田一。「こわいよー」と言いながら部屋に逃げ隠れ、それでも気になって
翌日の昼間に「あの怖いやつ観たい……」と母にリクエストし、「ひー。ぎゃー。」とか
言いながら何度も観ていたものです。中学生くらいかな?
その中で格別印象に残っている作品の一つがこれ。というわけで。
家でも文庫は有名どころは揃っていたのですが、大人になって独立すると次第に自分でも
原作を集めて読みあさって行きました。うーん、表紙が怖かったんだこれまた。。


え、能書きはもういい?はいはい、では本書について。(未読の方、以下ストーリーに触れるんで
ご注意を。犯人の名、トリック、具体的な動機には触れませんが)


金田一が事件発生前から関わって行くので、それでこの被害者数を考えるとやはり
さすが「登場してからの被害者数ベスト1探偵」(どんな名前だったっけ?^^;)の名は
伊達じゃない。
これで殺人は終わらないという予測がたち、(犯人の正体まで知っていたらしい!)
次なる被害者の見当が付いたかという場面からさあ金田一、、、、、、

どこ行くねーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!
(せめて現場に残る磯川警部に指示をーーーーーー!!)


まあ面白いのでそれはいいとして(恒例のツッコミなんでお気になさらず)。
手毬唄そのものがブラックで、現実の村の状況と一致している。そして手毬唄の歌詞通りに
殺人が。古今東西の「見立て殺人」の王道といえばまずこの作品でしょう。
特に3番目の歌詞が明らかになる老婆が唄うくだりは戦慄もの。
そしてラストの、犯人の正体が一同の前にさらされるあのシーン。死体というのが
クライマックスを盛り上げるし、不謹慎な表現だけれどドラマチックな「見せ場」。
最後に明かされる、20年前の惨劇の真相と、現在の連続殺人との繋がり。
人間関係の逆転劇と、犯人の哀れさ。巻き込まれた村人達の悲しみ。

こうして読むと詰め込まれているのに、一切ムダが無く、すんなり真相が頭に入って来る。
あざとい離れ業でもなく、道具と設定だけで作り上げたそのルールから逸脱せず、
それでも最高級の探偵小説に仕上がっている。
どこまでもプロフェッショナル、そしてオンリーワンだ。
亜流は出やすいが、今現在でも真似されるだけの佇まいを持っている。名作だ。