すべてが猫になる

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葬列 (ねこ3.9匹)

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角川文庫。第20回横溝正史賞正賞受賞作。


不幸のどん底で喘ぐ中年主婦・明日美としのぶ。気が弱い半端なヤクザ・史郎。そして、現実を
感じることのできない孤独な女・渚。社会にもてあそばれ、運命に見放された3人の女と1人の
男が、逆転不可能な状況のなかで、とっておきの作戦を実行したーー。果てない欲望と本能だけを
頼りに、負け犬たちの戦争がはじまる!(裏表紙引用)


これも鬼畜でした^^;「彼岸の奴隷」程ではなかったけれど。
作品の幅が広く、何を描いてもこの人は自分の小説になる、というのは前回書いた。
対岸の火事見物的な欲求を満たす小説だとは前々回書いた。
文章は褒められないが心理描写がリアルで凄いとは毎回書いた。
本作も、その全ての要素が凝縮されてただ一つの「小川ワールド」が完成されている。

登場人物の心理や境遇などは決して身近なものではないのだが、(これも毎回思う)
そこまで描くか!?という程人間の奥深い心理が頻繁に目に飛び込んで来る。
何度も心の中で「うわっ」とつぶやいてしまった。
そこが自分には快感なんだろう。
自分の汚い部分には目をそらしたいと思うのが人情だが、それが自分だけじゃなかったという
発見は蜜の味。小説内の人物の不幸や汚さを喜ぶ野次馬的な欲望ではなかった。それに
気付けたことだけでも本書は読んで良かった。これが今までで一番好きとも言える。

そろそろ認めます、はい。私、こういうの大好きです。(しかし「彼岸~」はさすがに^^;)
ああ、言っちゃいけないのにとうとう言ってしまった。

まあいいか。私は「読む側の人」だ。