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神様からひと言 (ねこ3.8匹)

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荻原浩著。光文社文庫


大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを
起こし、リストラ要因収容所を恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に
奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる
彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや……。(裏表紙引用)


ミステリじゃありません。
去年読んだ荻原氏の『噂』が面白すぎたことに感動したので、他のも読んでみることに。

確かに、この面白さは普通じゃない。
次々主人公の身にふりかかるトラブル。個性むきむきな職場の上司、同僚たち。
それをいかに乗り越えて行くか、自爆するか。「よっしゃ、よくやった!」と拳を握ったり、
「えーっ!この展開はないだろう」とハラハラしたり。バランスがうまいというか、読者の
つぼを把握している印象。

ただ、自分ははまり込むほどではなかったかも。はまり込む、っていうのは
何であれ自分の感情がどこかで揺さぶられるか、ということ。
ごめんなさい、それがなかった。
出て行った彼女を半年も想い続ける、っていう主人公の性格がどうも好きになれず、
必然的に結末も私の感想は「ありえんありえん」だった。
会議室でのどたばた劇も、なんだか幼稚に思えたし、面白いけど、それだけ。
テーマ自体がピンと来なかったというか、そんな事、神様に教わるほどの事かと。。
どうしても迷った時、岐路に立った時、自分は
「神様お願い」という行為に走る人間は好きじゃないのだ。
思わぬ幸運を得た時あるいは自分自身の決断があって初めてそこで「神様ありがとう」。
それでいいと思うのだが。
少しこの物語から飛躍するけれど、ユーモアとして楽しむには日が悪かった。

いや、でも、面白いのは面白いわけで。何回笑ったか数えてないけれど、
読ませる手腕は相当にある作家さんだと思った。他の本も読んでみたいとは思う。