すべてが猫になる

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転・送・密・室 (ねこ3.6匹)

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講談社文庫。

チョーモンインシリーズ第5弾。6編収録の短編集です。


結構久しぶりにこのシリーズを読んだという事に気付いたのは、読み始めて
続々出て来るおなじみのキャラ達の人間関係の記憶があやふやになっていたという事実による^^;
そして、特別好きなシリーズではないのだけれど、読むにつれて
「あ、そういえばこれ結構面白いんだった」という事も思い出した。ほら、最近手を出してた
西澤さん本がどうもパッとしなかったもんで。
そういうわけで、特別「これはいまいち」「なんだこれ。ぷっ。」という作品は一つも見当たらず、
順調に楽しい癒しの読書となったのは嬉しいかぎり。


本シリーズに出て来る神麻さんはじめ主要な女性キャラ達、私は結構みんな好きだ。
神麻さんの妄想キャラはここまで行くと純粋に楽しめるし、能解警部も大人っぽく聡明で
意外と純情で好感度は高いし、保科さんの元妻である聡子さんも、憎まれキャラという位置かと
思いきや実は気さくでありのままな無理のない女性像かと思われる。

神麻さんは男性読者からすると「女性に一番嫌われるタイプのキャラ」かと
思われそうだが、実際そういうわけでもないと私は思う。(ここまで行くとね)
「性」を売りにせず、保科の(保科呼ばわり)妄想に惑わされなければ彼女がかなり
頭の回転の速い人間だということはわかる。そもそも、「料理が得意」というのは
同じ女性として「嫌う」要素には成り得ない。現実の話だ。

気に入らないのは、この魅力的な女性達がなぜか惹かれている保科という男のみ。
設定上、女性にモテる要素は備えている。茫洋としていて一見頼りなく、でも優しく、
頭もいいのだろう。
しかーし、そうじゃないんだよなあ。
「母性本能をくすぐる」要素として、彼には絶対的に足りないものがあるのは致命症。
私にとってのそれは、「謎とエロス」。
彼を中心的な語り手にした事で(本作はそうでもないが)、保科の器が見えてしまっている。
それは読者から見た観点だが、しかし、聡子はじめ関わる女性にも保科の内面は筒抜けだ。
女性は、追えば逃げるもの。本当にモテる男性というのは、気のないそぶりぐらいは
してみせるしここぞと言う時にだけキメてみせるもんだ。

……というのが私の見解。全ての女性がそうだとは言わないが、このシリーズの
保科の女性読者からの不人気ぶりを鑑みてもあながち見当違いではないかな、と思うんですが。
まあ聞き流しておくんなまし。

さてさて、愚痴はさておき。
このシリーズの人間関係、前作でちょっと思わせぶりな「未来」を予感させるシーンが
ありましたが。本作でも、またじらしてくれてますね。ほんのり「伏線か?」というような
記述も挟まれているのですが、はたして。。。

いっそ、神麻さんは「保科の妄想だった」というドラえもんの最終回的オチとかどうだろう。。。