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ねじの回転/The Turn of the Screw (ねこ3.8匹)

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ヘンリー・ジェイムズ著。創元推理文庫

ゆきあやが恩田陸!?と思った方ごめんなさい。
そして、最近なぜか「ジェイムズ」さんづいています^^;よっぽど多い名前なんでしょうか。
日本人で言うところの山田さんクラスでしょうか。

「心霊小説傑作選」という肩書きのついた短編集。
表題作「ねじの回転」が中編、続いて4作の短編が収録されている。
あまり詳しくないので、そのまま記載されている内容を端折って書きますと、
約100年程前に書かれた作品群だそうで、「ゴースト・ストーリー」の古典として
称賛され、さらにその「難解さ」が取り沙汰されてきた「名作」とのことです。
さらに、かのスティーブン・キングが「この100年間に出た怪奇小説で傑作と言えるのは、
『たたり』と、この『ねじの回転』だけという気がするぜ!」と自身の作品で語っていらしたとか。

しかし、私は以前『たたり』を読んでなんともなかったのと、
(それなら『エクソシスト』とか『ローズマリーの赤ちゃん』の方がまだ怖かったような。。)

「たしかキングってくだんの『隣の家の少女』を絶賛してたよな……^^;;;;」

という前科があるので、あまり参考にもせず(ひどい)手を付けてみた次第。


「難解」とはつゆ知らず、気負って読み始めたものの、新訳ということでびっくりするくらい
読みやすかったのでほっと胸をなで下ろしました。

表題作『ねじの回転』がやはり一番読み応えあり。決して怖くはないけれど、
家庭教師の一人称=主観のみで物語が進むので、美しい子供達に取り憑いた幽霊が怖い、と
言うよりは、この家庭教師の女性の心理が怖い。性的に抑圧されている女性の妄想、という
解釈があるらしく、なるほどそう思って読むと実際に幽霊を見たのは彼女だけだし
幽霊が出没するきっかけも、性を連想させるようにこじつけられないこともない。
そう考えると、ねじの回転数が1回かどうかは疑わしい。
このオチは、今でこそよく見るけれどもしかしなくても本書がその先駆けなんでしょうか。

つづく、『古衣装の物語』も三角関係ということで、嫉妬でドロドロした姉妹の
関係を深くいやらしく描いていてけっこう好き。
ただ、オチが。。この作家さんもしかして全部唐突……?
『幽霊作家』もなかなかの佳作。ここに出て来る幽霊が面白くてヘンに生活感があって、
楽しいです。でも、後の展開で「楽しい」なんて言ってられなくなりましたけど。
幽霊の心理を想像すると、ぞぞぞぞ。

ここまで↑3作だったら、評価はねこ4.4匹だったです。
後に続く2作、悪くはないんですけども(傑作集ってくらいだから)。
オチでがつーーんと世界を確立して読者の呼吸を止めるのは共通。
ちょっと薄味。

でも、面白かったし大変気に入りました。
でもでも、やっぱりせめてあと10年は前に読みたかったね。