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はなれわざ/Tour De Force (ねこ3匹)

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クリスチアナ・ブランド著。ハヤカワ文庫。

休暇を過ごすため、イタリア周遊ツアーに参加したスコットランド・ヤードの名警部コックリル。
だが、事件が彼を放っておかなかった。景勝で知られる孤島で一行のひとりが何者かに殺された。
地元警察の捜査に不安を感じたコックリルは自ら調査に乗り出すが、容疑者であるツアーの面々は、
女性推理作家やデザイナー、隻腕の元ピアニストなど一癖ある連中ばかり。。
「ミステリ史上に輝く大胆なトリックで名高い、著者の代表作」(裏表紙引用)


数回の挫折を繰り返し、ようやく読了にこぎつけた本書。
いや、本気で、真剣に、読むのが辛かった。。字のフォントも大きいし、読みやすい文体だし、
会話は多いし専門用語は出て来ないし平仮名も多い。
しかし、事件が発生しても淡々と進み、個性のきつい容疑者達ひとりひとりがお互いを
疑い合い、仮説をひらかしまくり、結局一向に進展しないこの展開には閉口してしまった。

しかし、傑作と名高く、邦題も「はなれわざ」で、これはもうトリックが売りのものである。
物語はつまらなくても、トリックは知りたい。
そこで、わたくしミステリ読みが一番やってはいけない行為に走りました。
「読んだ人に結末を聞いた」。。。。。
簡潔な説明だったが、そこでなんとタチの悪い事に逆に食指が動いてしまい、結局
自力で最後まで読んでしまった。なら聞くべきではなかったが、正直後悔していない。
実際、どちらにしても私の反応は「なるほど」だったと思うから。
がっかりした点と言えば、タイトルから察して○○トリックだと思っていたのが
違った事。

それはいいとして、最後まで読んだら読んだで嫌いではなかった。
金か、愛か?プライドか?という容疑者達それぞれの葛藤の描写の書き込みは凄かったし、
何より、真相に気付いた人物のその「理由」、そしてある人物がある人物に対して
変わってしまった心の推移。自分ならどうだろう?ここが私は一番面白かった。

と、ちょっと苦戦した結果になったが、この作家は短編集がいいらしい。
「緑は危険」に行くかはちょっと考慮して、そちらに手をつけてみようと思った次第。