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郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす/The Postman Always Rings Twice (ねこ3.8匹)

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ジェイムズ・M・ケイン著。ハヤカワ文庫。

浮浪者のフランクは、ふと立ち寄った安食堂が気に入ってしまった。ギリシャ人の主人も
フランクを気に入り、従業員として雇ってくれることになった。フランクがその店を
気に入ったわけは、主人の妻であるセクシーで若い、コーラにあった。
やがてフランクとコーラは愛し合うようになり、主人の存在が疎ましくなる。そして
二人で立てた、ニック(主人)殺害計画……!!


舞台は1930年のアメリカ。
訳のせいなのか定かではないが、ハードボイルドの色をあまり感じない、言うならば
純愛サスペンス・哀愁版といった印象。
あまりにも有名作品のため「ハードボイルド入門編」として手に取ったが、これなら
もろ私の好みだ。

自分の運命を呪い、愛に目覚めて血迷ってしまう二人。
やはり自分の人生、運命からはそうやすやすと「さあ昨日までの自分にさようなら」と
逃れられるわけはない。やっぱり放浪者であり、安食堂の料理人なのだ。
それでも、コーラはうすうすと「甘い夢」だった事に気付いてしまったのだろう。
ここがやはりいつの時代も、女性の現実主義的な本能が出てしまうのだ。
そのあたりの葛藤がとてもいい。

そして、二人のハイライトが山で情熱の限りを尽くしたシーン。それを
「私達の山」と表現するのが素晴らしいじゃないの。
このラストシーンはなるべくしてなった、という感があり哀しいったらないが
それがまた郷愁を誘う。
傑作はやはり傑作だった。


あと、邦題である「郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす」について。
物語には郵便配達人も何も出て来ないが、これは何を示唆し、象徴しているのだろうか?
時代が古すぎるためか、人種の違いか、私には全く持ってピンと来なかったのですが。。