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まどろむベイビーキッス (ねこ4匹)

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小川勝己著。角川文庫。

キャバクラ「ベイビーキッス」に勤め始めた風間みちる。指名をとるため、居場所を
確保するためには強引な営業も辞さないが、そのため職場の仲間達から辛辣ないじめを受ける。
一方、自宅では「SHIHO」というハンドルネームを使い、キャバ嬢サイトとして
そこそこの賑わいを見せ、日々訪れる人達とのやり取りを楽しんでいた。しかしある日、
なにげなく自分が書き込んだ「鬱病」の人のサイトの自分の発言がきっかけで、
大きな「荒らし」を呼んでしまうがーーーー。


これは面白かった。大ヒットと言わせてもらうのに遜色なし。
インターネットの匿名性の恐怖、言葉による誤解と悲劇はここのところ比較的よく見られるテーマ。
荒らしによる「死ね」などの羅列を数ページにまたがって記載する所など、スティーブン・キング
焼き直しをちょっと派手にやってみた、くらいのもの。迫力はあったが。
主人公の狂気も、もっと凄いのかと思っていたくらいだ。


読後の感想としては、今まで味わった事のない奇妙な爽快感を味わった。解決はしていないし
主人公がやろうとしていることに恐らく未来はないが、最後の1行の彼女の言葉は強烈だった。
間違っていると、あるいは自分には関係のない世界、感覚だといつもならしらけても見せる所だが。
こういう構成で、ミステリとしてのトリックを交えた小説で、最後まで自分の世界観を
通し切るのはなかなかの腕前とみた。普通なら、中盤の西村京太郎的展開からもう先へは
広げないものだと思うが。

構成やトリックの仕掛け方などで少し言いたいこともあったが、このインパクトの前には
たいした問題でもないかもしれない。これが究極のエンターテイメントだというなら上等かも。

う~ん、読んでる最中は褒めるつもりじゃなかったんだけども。。小川氏、おそるべし。