すべてが猫になる

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数奇にして模型 (ねこ3.8匹)

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森博嗣著。講談社文庫。

 

2021.3.27.再読書き直し。

 

S&Mシリーズ第9弾。

やはりと思った通りに、もともとの自分の評価は高くなかったな(3匹)。700ページ強とラスト2作は長く、あまりいい印象がなかったのはそのためか。当時の自分にはこれを自分の中でうまく消化出来なかったのだろうと思う。こういう天才型の、哲学的な、異常な思考というものが犯行の動機となるものに今なら多少は耐性があるだけかもしれないが。普通の本格ミステリィに当てはめれば到底納得できるロジックではないが、この作品に限っては、異常な思考そのものをロジックの基盤としている。それに気づくことが出来れば論理的だし、従来より哲学的要素が濃い部分さえも物語を形作る必要な要素だろう。

 

さて、難しい話はさておき(どうせキャラ読みだ)。

犀川さん、相変わらず萌絵にそっけないままでもどかしい。萌絵がいないところでは「西之園君を殺したら、僕が貴方を殺す」なんて告白とも取れる爆弾発言をするわりに。言葉の端々や、行動の一つ一つは答えが出ているのにね。しかし今回、萌絵があまりにも貞操観念というか危機管理能力がない感じがしてイヤだった。そりゃ犀川さんもヤキモキするわあ。オネエキャラの大御坊が面白かったけど、他の作品にも出てくるんだっけか。あと気に入ったのが女医の曾我さん。国枝さんをもっと口悪くしたようなキャラで好き。金子もいいね。萌絵のピンチには必ず駆けつける感じが。萌絵に気があるのかと思いきや、終盤である秘密が明らかになって、本当に純粋に正義感のあるいいやつなんだなと判明。