すべてが猫になる

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七人の中にいる (ねこ3.5匹)

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今邑彩著。中公文庫。

ペンション「春風」のオーナー・晶子のもとに、21年前のクリスマスイブに起きた医者一家
虐殺事件の復讐予告が。現在の幸せのために、葬ったはずの過去なのにーー折しも明後日に
控えたクリスマス・パーティーに常連客が次々とやってくる。元刑事・佐竹の協力で明かされていく
客たちの身元は?オルゴールの蓋が開き、旋律が流れるとき、封じてきた惨劇が甦る!


スリル満点のサスペンス。
結論を言うと、とてもとても面白かった。
発端となった21年前の事件が残酷で思わず気分が悪くなるが、「脅迫」におののく
晶子の心理に緊迫感を出すのに必定な設定だろう。

その割に、意外とコミカルである。本人はたまったもんじゃなかろうが、登場人物が
それぞれ個性的で、感情の露出が露わなのだ。どこの一昔前の台詞よ?というような
こっぱずかしい台詞が頻繁に出て来る。
現実時間で殺人が発生していないのも一因だろうか。
実は、それが要因で後半になってくると眠たい展開になって来た。
ここまで読むと、もう「あ、犯人こいつね」と決めつける域にまで達してそれが
やはり当たる。
まあそれは盛り上がったのでいいのだが、そこがそうなら
もう少し、犯罪に加担した(手を出しているいないでなく、普通の人間ならしませんから)
晶子の心理を掘り下げて欲しかった気も。

・・・などと不満があったのは事実だが、後半でその気持ちが覆された。
人間関係が、動くのだ。そこが一番面白かったのだが、どいつもこいつもまあ
一癖あるんですね。思わず笑いが出てしまったですよ。
なるほど、この小説は「芝居」だと思えば楽しいひらめきだ、って事か。
そう仮定すれば、人物の自己表現の派手さ、古くささ、身振りの大袈裟ぶりなどが
しっくり来てしまうのだ。
そういう気持ちになると、あら不思議、この作家の持つこの世界も悪くはないかも。。