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ローマ帽子の謎/The Roman Hat Mystery (ねこ3.6匹)

衆人環視のローマ劇場内で、突然、死体となって発見された正装の弁護士!シルクハットが紛失
していることを唯一の手がかりに、名探偵エラリー・クイーンの苦心惨憺たる活躍が始まる。
エラリー・クイーンの輝かしき処女作であると同時に、国名シリーズ十部作(ん?)の皮切りとも
なった本格推理の名編である。


現在、ハヤカワ文庫と創元推理文庫で本作は入手できるが(ハヤカワは絶版?)、
タイトルが微妙に違っている。「謎」か「秘密」かだけの違いだが、今後私の愛する
「ニッポン樫鳥の謎」を(ハヤカワは「日本庭園の秘密」)このタイトルで紹介したいために
国名シリーズは創元のタイトルで統一させていただきます。実際、現在は創元でも揃えているので。
ちなみに、本来「ニッポン」は国名シリーズに含まれないらしいが、十部作の方がキリがい
いのと紹介記事の便宜上、私が今後「十」と書けば本作を含んでいるとご理解くださいまし。


で、いきなり大仰な書庫名をつけてしまったわりに記念すべき1冊目が本書、ということで
実はテンション低い私なんですが^^;えーと、私にとって本書は国名シリーズ堂々の
ワースト1作品でして。。ああ、なんか気まずいぞ。
国名シリーズの中で、どれが一番あなたは好きですか?と聞くと、「エジプト」だ、
いや「チャイナ」だろう、とバラバラの答えが返って来ても私は驚きません。……が、果たしてこの「ローマ」がベストだ!という方がいらっしゃればさすがに驚くかも^^;あとがきにも
あったように、国名シリーズはヴァン・ダイン12作のように人気作が偏っていないのですが。

理由は、なんでしょうね。決して駄作ではないし、こうして読み返してみると
素晴らしい論理的帰結の本格ミステリなのですが。
比較的、意外性に乏しいかもしれません。
エラリーの推理通りに読者が推理して行けば、エラリーと同じ結論に辿り着くだろう、という
まあ読んだ後だから言えちゃうんですが、難易度の低さでしょうか。そうして見ると、
犯人の○○の特定もちょっと早すぎるんじゃないかとか、帽子帽子と騒いでいるわりに
「じゃあ靴でも良かったんじゃ・・」というような物足りなさとかが気になっちゃうんですね。

ただ、被害者の行動ひとつひとつ取っても、ちゃんと理由があって、最後に犯人を特定する
根拠の一つとして機能しているあたりは素晴らしい。人物がステロタイプでも、充分に
納得できる心理なんです。こういうのを読むと、人間が描けていないとかしゃらくさい、と
私なんかは思ってしまうわけですが。。

しかし、このクイーン親子の愛情は素敵ですね。リチャード警視にとってはエラリーはまだまだ
子供なんですかね。それでいてエラリーが側にいないと拗ねてしまう警視。なんだかほっこりします。


さて、「ローマ」も書いたし、次から張り切って行こう!えーと、次は
「フランス」・・・。。
あ。。。。そうなの。。。(なんやねん)

 
※「ローマ帽子の謎」創元推理文庫(井上勇訳)
※「ローマ帽子の秘密」ハヤカワ・ミステリ文庫(宇野利泰訳)