すべてが猫になる

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少女は踊る暗い腹の中踊る (ねこ3.8匹)

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岡崎隼人著。第34回受賞作。

連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、
無為な日々を消化する北原結平、19歳。自らが犯した過去の「罪」に囚われ続け、
後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女、蒼以によって、
孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー「ウサガワ」の出現。過去の出来事の
フラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の奥に潜む更なる闇。
「モラトリアム」「絶望」なんて言葉じゃぬるすぎる!(裏表紙引用)


この書庫の更新は久しぶりだ。ある時期からこの賞のレベル低下を如実に感じているのと、
読みたいと思う本がまだノベルス落ちしないのと、書庫で記事が抜けている「コズミック」を
読む気があまりないのとで久々の更新となった。なぜ本書を買ったかというと、浦賀本の横に
平積みしてあったのでついでに、というのが本音だ。魔が差したのかもしれない。
このキてるタイトル、「青春ノワールの究極系」という売り文句、やばい空気ぷんぷんのあらすじ。
ふむ、佐藤友哉ファンの自分には合うかもね。ってなもんで。決して、著者近影が
今世紀まれに見るイケメンだったからではない。11歳年下は守備範囲外だ、・・って
ちがーーう。

・・おほん。で、どうだったの?というと。
出だしからまず文章のひどさに引いたという幸先の良くない滑り出しだった。
読書において、そこが最優先事項ではない自分だが、それでも限度というものがある。
やめようかな。。と思いかけたその時。神は降りた。
コインランドリーでの客からの不審な呼び出しのくだりからだったろうか。
お?これはちょっと、、なめてはいけない予感がするぞ。

世界観は既に先者がいるし、文章はしつこいが素人レベルだし、ストーリーもコレと言って
斬新ではない。むしろ、大から小までご都合主義だし意外性も乏しい。
しかし、この作者は自分の書きたいものが明確にわかっていて、先駆者をリスペクトしながら
自分ならこう書く、という意志、自信、楽しんで書いているという情熱を持っている気がする。
結果、ストーリーにぐいぐい惹き込まれて行くのだ。
460ページ強の大作だが、退屈でだれるといった箇所はなく、クライマックスまで怒濤の
ハイペースで読み切ってしまった。
期待の新人が登場した、と読了後は胸がいっぱいになったと言っても大袈裟じゃない。

インパクト、存在感、という点では佐藤友哉浦賀和宏には劣る。
しかし、デビュー作で大爆発し、文章力アップとともに勢い沈んでしまった両者最近の作品よりは
圧倒的にこっちの方が面白かった。
まだ若い作家である。文章力は書けば書く程上がるだろう。
次作をひとり楽しみにすることにしよう。だって、これは大きな声で「好きだ」と言っては
いけない匂いがするからね。。。