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青チョークの男/L'homme Aux Cercles Bleues (ねこ3.6匹)

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フレッド・ヴァルガス著。創元推理文庫

アダムスベルグシリーズ第1弾。
フランスミステリ界の女王による大人気シリーズがこのたび創元推理文庫にて
初登場ということで。本作は1990年の作品。

パリの街で夜毎、路上に青チョークで円が描かれ、その中に様々なガラクタが置かれるという
奇妙な出来事が続いていた。蝋燭、人形の頭、クリップ……。変わり者の哲学者の仕業か?
しかし、ある朝、そこにあったのは喉を切られた女性の死体だった。そして、また一つ、
また一つ死体が……。警察署長アダムスベルグが事件に挑む。(裏表紙引用)


と、あらすじを書いてみたが、もしこのストーリーを読まれて興味を持たれた方がいたとしたら、
「待て、そこは期待するんじゃない」と一言言いたいかもしれない。もう最初っから
テンションをくじくが、ミステリとして読むにはこれ、かなり弱いと思う。
私なら、これを読んでこういうあらすじは書かない。

主な登場人物が最高にいい。人の尾行ばかりして過ごしている海洋生物学者の女性、
ヒルな盲目の青年、交際相手募集の広告に応募しては玉砕しまくる老婆。
設定は奇妙でありながら、非常にスマート、お洒落、おフランス文学的。
日本人にとっては哲学的な印象を受ける国民性を魅力的ととるか、地味だととるかは
読者の裁量に委ねられる。自分がフランス人だったらこうは読まないだろうと思う。

奇妙な事件は登場人物達の物語を手伝う役割を果たす。はっきり言って、私は事件の
真相には興味は持てなかった。不必要ではないが、そちらを期待するかしないかによって
評価は180度違ってくると思う。

主人公であるアダムスベルグと、パートナーのラングドール刑事もこれまた個性的。
ほんの少しのロマンスと、捜査主流でない物語の運びは自分との相性が抜群に良かった。
アダムスベルグの元恋人は一体どういう過程を経てこうなるに至ったのか、そこの所の説明が
不親切で不満だが、どうやら次作でそちらがメインになる模様。

私はそんなにたくさんは知らないけれどフランスの作家を読んでハズした事がない。
大当たりではなかったが、ぜひ次も読んでみようと意気込むくらいには気に入ってしまった。