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ワイングラスは殺意に満ちて (ねこ1.5匹)

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黒崎緑著。文春文庫。第7回サントリーミステリー大賞読者賞受賞作。


大阪・ミナミのフランス料理店『フィロキセラ』で殺人事件。
店の酒庫で、明日来店するはずのグルメ評論家の他殺死体が発見された。
遺体のそばでは年代物のワインが割られていた。そして連続殺人へ。
ソムリエ富田香の推理はーーー?


合わない作家、というのがいる。
初めて読む作家の本が合わなかった場合、合わないのは作家ではなく「たまたま、この本が」と
判断して、少なくとも3冊までは読むことにしている。例外もあるが。
たいていカンは当たるもので、1冊目で合わなければ2冊目も合わないのだ。
なら3冊目を読まなければいいじゃないかと思うが、まれに3冊目で大当たりする作家がいる。
驚くなかれ、今だから言えるがかの東野圭吾宮部みゆき、ちょっと変則的だがタックシリーズも
私にとってはそうなのである。

前振りが長くなったが、本作である。
…………すいません、例によって黒崎氏3冊目。自爆しました。
プロローグ~事件発生まではこの軽妙な文と会話に惹き込まれ、今度こそ大当たりの鐘が
りんごんりんごん鳴るかとうきうき読んでいた。ワインについての氏の知識も凄そうで、
素人にもさくさく読みやすく、出て来る登場人物達も個性の塊で生き生きしている。
その点はかつて読んだ2冊には感じられなかった長所で、前途は明るいと思ったとしても
自然かと思われる。

だからこそ、ミステリとして期待してしまった。もっと論理的で、意外性に富んだ
斬新なものが出て来ると思ったのだ。全ては「うっかり」で成立するこの謎解きと、
動機の後からつけたような平凡さ、普通を絵に描いたようなミステリ。この展開には
私自身ががっかりしてしまった。

この作品が評価されているという点に疑問は別にない。
良し悪しではなく自分との相性だと自覚している。求めたものが違ったのだろう。
さようなら、黒崎さん。もう読むことはありません。