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絡新婦の理  (ねこ4.8匹)

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講談社文庫。京極堂シリーズ第5弾。

房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを幻惑し、搦め取る。中心に陣取るのは誰か?(裏表紙より)


21.9.23再読書き直し。

 

怒涛の1370ページ強。筋肉痛必至のレンガ本、凶器本である。にも関わらず、シリーズ中で一番読みやすく、長旅ながらも苦痛を感じることはなかった。テーマが宗教でありながらも女学校を舞台にしており、女性差別に根ざしたものであるためスっと入り込みやすかったのだろう。過去の登場人物が数人出てくるため順番通りに読むことをオススメしたい。あと最新作で出てきた美由紀ちゃんはここで登場していたのか。こんな可哀想な目に遭っていたとは。芯が強い。

 

千葉県で発生した猟奇殺人「目潰し魔」と、女学校を中心に連続した絞殺犯が複雑に絡み合う。覗き趣味の男、視線恐怖症の男、娼婦、そして富豪一家四姉妹。特に母含む四姉妹が個性的で魅力があり、それぞれに良家の子女ならではの懊悩、呪縛がある。三女の葵は女権拡張論者で、女である自分でさえ「ウザ…」と思えるほどの舌鋒だ。DVダメ男を婿に取りそれでも従順な次女の茜、そして四女の碧は黒ミサにはまっており、売春、殺人疑惑がある。幕間で登場する女蜘蛛=全てを操る者とは一体誰なのか、これが誰でもおかしくない。京極堂の登場ですべてのめくるめく事件、人間関係が収束していく。まだ続くのか、というぐらい次々と、1人1人にとりついた<憑き物>が落ちてゆき、その小気味良いほどの論破、論破が痛快。最後のほうは家系図を作りたくなったぐらい錯綜している。

 

関口くんが最後の最後にしか登場しないのは残念だったが、一番おいしいところを持って行ったのでは。ともあれシリーズ中1、2を争う名作である。