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作家小説 (ねこ3.9匹)

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幻冬舎文庫

全編、「作家」をテーマとした8編収録の心理ホラー短編集。

よくもこれだけ同じ職業をテーマに様々な物語が描けたなあと感心でござる。
もちろん、作者自身が作家であるから為せた技かもしれないが。これがもし
「公務員」をテーマに8作、とかだったら2作程で煮詰まっているでしょうね。

というか、わたくし、こういうの大好きなんですってば。
ミザリー」を筆頭に、作家を主人公にしたホラーと聞くととにかく読まねば、
という気分になります。折原さんにもこのテーマ多いですね。
雰囲気という点では、挙げた先駆作品には大いに負けるけれど
有栖川さんが描くと恐怖度は薄まるもののどこかスマートで論理的。
宗旨替えして欲しいかも、と一瞬思ったくらいお気に入りとなりました。

「書く機械」
ホラーです、ホラー。出だしの入りにくさを除けば終わり方が粋です。

「殺しにくるもの」
お気に入りですが、もう少し短編らしくすっきりしてくれたらもっと良かったかも。
最後はぞっとしますよ。

「締切二日前」
これは想像つくなあ、と思いきや。張っていた肩の力が抜ける面白さ。

「奇骨先生」
名前のインパクトにちょっと負けた感が。でも、いいお話かも。
出版業界のお話は、実話なんでしょうか?そうだとすると、やっぱり
本の購入は新書で、なるべくネットでなく本屋さんで、と思いましたね。。
でもネットで買った方が美品なんですよね^^;。破れてたり汚れがあったら
値引きしてくれないかなー。

「サイン会の憂鬱」
これは笑える怖さですね。オチは星新一風??

「作家漫才」
なんだこれ(笑)タイトル通りの内容です。こういうのうまいなあ、さすが大阪出身。

「書かないでくれます?」
これ、好きです。不気味で。ただ、ちょっと動機が弱いかな。雪女のパロディにしては。

「夢物語」
ちょっと作風を変えて来ましたね。SFぽいというか。このオチ、あとがきによると
「二通りの考え方が出来る」とのことですが、私、一通りしか思いつかなかったです(泣)
いや、これで十分面白いしいいか。。


特別抜きん出て面白い!!という作品はないのですけど、全体的に安定した面白さがある、
というか。自分の好みど真ん中だったのでしょうね。
ホラーというにはソフト、サスペンスというには不条理。
ちょっとした息抜きに、楽しめる小説だと思います。