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猟死の果て (ねこ2.8匹)

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ハルキ文庫。

ノンシリーズもの。
名門女子学園の卒業を間近に控えた生徒が次々と全裸死体で発見される。
被害者達は、全員タイツを盗まれているという奇妙な共通点があった。
捜査が進むにつれ、彼女達の意外なミッシングリンクが浮き彫りに。
一方、警察内部ではそれぞれの刑事の確執により事件が発生、ついには
殺人に発展するがーー。


この本が面白かったのかどうか判断が難しい。
「人間のエゴ」を描いた小説として褒めちぎればいいのか、本格ミステリとして
動機と犯人の心理に物申せばいいのか、サスペンスミステリーとして不格好だと
非難すればいいのか。・・・て、全部言ってしまいましたが。

出て来る人間達は読んでて引いてしまうほどに愚鈍で哀れ。それは西澤さんの
得意とする所。やはりここまで底辺まで行ってしまってる人間を描くのは見事です。
しかし、捜査主流の社会派ミステリとしては少々やりすぎた感も。
全員、似てるんですよ。人格や壊れ方が。そこに重点をおいてしまったため、
肝心の猟奇殺人が面白いと思わなかった。刑事殺人なども、余計だったと感じる。
テーマにしている人間の恐ろしい内面やナルシズム+女子高生殺人事件、これだけで
十分内容は濃く、逆にすっきりまとまったのではないかと。


「読後感が悪い」というのはそれはそれで一つのしっかりとした物語世界。
本作は重く暗く救いがたいストーリーだが、
不愉快になる余裕もなかった。