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消える「水晶特急」 (ねこ3.8匹)

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光文社文庫。吉敷シリーズ第4弾。


国鉄が開発した一等展望車両「クリスタル・エクスプレス」。その
試乗会にはマスコミ関係者や有名人が招待され、上野ー酒田までの
処女旅行と、代議士の加灘耕平の選挙の票稼ぎも兼ねて出発を待つばかりとなった。
しかし、旅行直前に加灘が脳梗塞で倒れ、代わりに彼の娘、晴美が乗ることになる。
雑誌記者の夜片子とカメラマンの国田も取材のため乗り込み、同じ雑誌記者の弓芙子に
見送られながら、列車は問題なく出発した。
しかし、突然の列車ジャックが発生。夜片子と晴美含む乗客の女性5名は人質にとられた。
犯人、松本の要求は、加灘を呼び出しこれまでの悪事をマスコミの前で告白しろ、と
いうものだった。だが、当の代議士は重体のため要求を呑む事は困難であった。
編集部に戻った弓芙子は事件発生を聞いて驚愕し、夜片子の身を案じる。
そして、代議士を酒田駅のホームに呼ぶという計画が進行する中、
突如「クリスタル・エクスプレス」が単線の清川ー狩川間で煙のごとく消え失せてしまう!



列車消失、列車ジャック、殺人。ハラハラもののサスペンスと列車消失の謎、
内容はかなり充実したお話。
吉敷刑事も今回はほとんど中盤まで「声」だけの出演ということで
今までのシリーズの傾向とはまた違った趣き。
トリックも今回は心理ものということで、事件の発生が派手なだけに
全体的に地味な印象が。

地味だと書いたのは、別に列車消失のトリックだけを指しているわけではないです。
このお話の欠点に通じると思ったので、地味=即減点要素、という意味ではない。
トリックそのものは私好みであり、特にこれといった矛盾や不器用さは感じません。
いやむしろとても計算されたトリックであり、盲点をうまくついていて
素晴らしいと思いました。

何が欠点かと言うと、まずこのトリックを解くにはあまりにも
読者への情報不足を感じます。裏で吉敷さんというやり手の刑事が控えているので、
何も手を打っていないわけがないのですが、あくまでそれだけでしかない。
しかも、ストーリーを進めているのは記者である女性二人であるため、
この吉敷シリーズを初めて読んだ人にはいきなり現れた刑事がいきなり問題解決、という
印象を抱いてしまいそうです。

さらに言えば、せっかくの列車ジャック、もっと突き詰めて欲しかった。。
タイトルからしてメインはあくまで列車消失なのでしょうが、ここまで松本という人間を
色濃く書き込んだからには、最後にほったらかしはないんじゃないでしょうか。


とか言いつつ、今まででは一番自分は面白く読めました。
主人公が働く女性だったのと、女の友情というテーマにはかなり共感できるものがあったので
それも一因かと。


収穫は、吉敷さんは意外と照れ屋さんだったのねという所。
そして、この物語を盛り上げる役割を果たした『消えたクリスタル特急』By大沢浩。
♪君のハートにシュシュシュ、シュシュシュ♪
これ、売れるか??^^;

イメージ映像としては、赤い衣装で踊るトシちゃん。