すべてが猫になる

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今はもうない  (ねこ3.7匹)

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森博嗣著。講談社文庫。

避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で一人ずつ死体となって発見された。二つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が…。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ。(裏表紙引用)
 
20.11.19再読書き直し。
 
S&Мシリーズ第8弾。
 
※ネタバレ記事です。未読の方はご注意下さい。
 
 
 
 
 
たいていの小説では初読時と再読時であまり感想や点数に動きがないのだが、この作品は再読によって「下がった」な。トリックの性質上、二度目の衝撃が薄れるのは当然なのだが、理由はそれだけではなかったかも。登場人物の笹木のセクハラ気質が気味悪くてアウトだったし、西之園嬢(叔母だと分かった上で)のプライドの高さや性質がどうしても受け付けなかった。トリックの解明がなかったのもビックリ。森作品ってそういうものもあるイメージだけど、さすがにこれは消化不良。
 
…と、書いたことのすべては最初の記事には言及されていなかった。当時の自分はまるで気にならなかったのだろう。それもわかる。シリーズ中でも突出した幻惑的な雰囲気や詩的で情緒ある清廉された文章が、他にはない魅力に満ち溢れているからだろう。そこは今も昔も素敵に映った。人気ナンバーワンもわかる。これもある意味「S&М」ではあるが、自分にはスピンオフ的な位置づけであるというだけだ。