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パラレルワールド・ラブストーリー (ねこ4.4匹)

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東野圭吾著。講談社文庫。


大手コンピュータメーカーの研究者として勤める崇史は、大学院在学中に
毎朝利用する山手線で恋に落ちた。就職し、彼女とは結局言葉も交わせないまま
月日は流れる。
そしてある日、崇史の親友である同じ会社に勤務する智彦が、恋人を紹介したいと
言う。そこに現れた女性は、なんとーー。
「記憶」と「真実」、2つの世界の狭間で起きる謎とは。


猛烈に感動した東野さんの傑作長編です。
しばらく話しかけないで下さい、わたくし今も涙でウィンドゥがぼやけてしまって……ううっ。

ずっと恋愛小説だと思っていたこの作品、たしかに恋愛も重要な要素ではありますが
ミステリとしても秀逸だと思います。
脳内記憶の研究なんて分野にはもちろん暗い私ですがニュアンスを読むという
離れ業でそこは補うわけです。当然東野さんの技巧があってこそですが。

構成はシンプルでありながら、記憶と真実の2つの章が時間経過通りに進むという
イカした構造。真実がわかる段階でも、主人公が「今から真相を述べよう」なんて
ありふれた手法でなく、臨場感あるサスペンスで仕上げるという憎い演出。
そして、プロローグがなんといってもうまいのですよ。
謎は謎のまま残しておき、最後の感動的なエンディングにまで効果を挙げるのですから。


友情と、恋のはざまで揺れる登場人物達の心理もこれまた読みどころなのです。
私は主人公の性格は共感できかねる箇所が多々ありますが、
おかれた環境を想像し得る三角関係という定番の設定が、このクライマックスを
陳腐でない感動的なものにしています。

満足。

面白い本はないかな?とお探しの方、ここにうってつけの本があります。
読者を選ばない作品だと思うので、未読でしたらどうぞ♪