はやみねかおる著。講談社ノベルス。
虹北堂という古本屋に生息する小学六年生の虹北恭助。同世代の子供との
会話はつまらないと嘯き、高校生程度の学力はありながら実は不登校児。
ガールフレンドの響子ちゃんはそんな恭助を日々心配し、淋しい想いをしている。
そんな二人の住む町の虹北商店街では、毎日のように色々な謎が発生。
恭助が、その謎をすべて一気に解決!?
5編収録の連作短編集です。この作品は既にシリーズ化されていますね。
読む前から気に入る自信はあったのですが、現職は小学校の先生だという
はやみねさん、相当な新本格マニアだそうで。
「平積みされていたノベルスの『十角館の殺人』を手に取っただけで、
読んでもないのに『この推理小説はすごい!』と思った」そうで(笑)
なんだか自分と同じ匂いを感じてしまいます。
ノベルスにして2段組ではなく、ジュブナイルの体裁をとっているのでしょうか。
さくさくと読みやすいし「大人向けジュブナイル」という表現がはまる感じ。
さてさて、内容ですが。
ミステリとしては、かなり初級。
しかし発生する事件はどれもオカルト風味のものが多く、面白いです。
虹北商店街の皆さんが皆さん暖かく、優しく、のんびりとしていて
ああ、自分もこういう所で育ちたかったなあと思いました。
子供の目線で見る大人って、結構おバカかも?なんて。
もう一つの注目すべき点は、恭助くんと響子ちゃんの関係。
初恋なんでしょうか?まるで恭助くんの母親のような響子ちゃん、
反して響子ちゃんを世話のやける妹のように接する恭助くん。
学校に来て欲しいと願う響子ちゃんは読者の目で見ても等身大で、
恭助くんは母性本能くすぐるアウトサイダー。
大人なのはどっちだろう?
達観している子供が恭助くんだとしたら、この文章から漂う孤独と切なさは何だろう?
彼の言う「探し物」というのが、物語としても読者の自己満足としても
私の想像しているものであって欲しい、というのはおこがましいでしょうか。
きっとそれは響子ちゃんの願いとも一致する。