すべてが猫になる

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灰色の仮面 (ねこ3.5匹)

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講談社文庫。

「最後の1行まで犯人がわからない!」が売り文句の作品。


フリーライターの山岸は、ある晩近所のマンションから女性の悲鳴を聞いた。
痴話喧嘩だろう、と無視して帰宅した山岸だが、ふと気にかかって
マンションの部屋まで赴いた。部屋には女性の死体。驚愕している山岸だったが、
そこへ女性のルームメイトである友人が帰宅し鉢合わせしてしまう。犯人扱いされる
事を恐れ、逃亡した山岸だが、翌日から似顔絵付きで手配されてしまった。
白いマンションに住む女性ばかりを狙った暴行魔のものとおぼしき電子手帳を入手した
山岸は、汚名を晴らすべく犯人探しを始めるがーーー。




折原さん作品では高評価に位置するこの作品。
「倒錯シリーズ」や「黒衣の女」などの「読者ぶん回し(Byいいづか師匠)」系を
読みこんだ方にとってはそれほど構成は目新しくなく、登場人物も少ないので
叙述の迷路にははまりにくいかもしれません。

犯行の「報告書」なども、山岸=犯人、という可能性ぐらいはミステリファンなら
推理する上で候補には挙げることでしょう。もう一つの可能性としてはあの人が
犯人というくらいでしょうか。(まあ、犯人だけ当てても仕方ないんですが)

そんな風にちょっと折原さんを読み慣れてるからって甘く考えているからですね、
最後にやられてしまうのですよね、自分^^;。

倒錯シリーズのような親切な「ここが伏線だ驚いたか!ガイド」は今回
ついていませんが、折原マジックど真ん中でありながらも
「仕掛け」は理解しやすい。「え、何がなんですって?」と戻る必要はないかも。
クライマックスでは右に左にと振り回された挙句「右なの!?左なの!?」
とか言ってる間に床が抜けて10メートル下まで落っことされたという感じです。


ハードカバー版では、結末が違うようですね。こちらは改訂版だそうです。
どうやら初稿では読者から「わかりにくい!」とクレームがついたそうで。
元の結末も、あとがきで紹介してくれていましたがなかなか味があって良さげです。


あと、ひとつだけ。
冒頭で紹介しました、「最後の1行まで犯人がわからない!」。
この作品の場合、この文句は当てはまらないと思うのですが。。。