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百番目の男/The Hundredth Man (ねこ3.6匹)

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ジャック・カーリィ著。文春文庫。2005年「このミス」6位ランクイン作品。


デビュー作です。
売り文句は、「今年最大の驚愕!」。


連続斬首事件が発生し、異常犯罪担当部署に配属されたカーソン刑事。
首を鋭利に切断された死体、死体のある部位に刻まれる奇怪な文字。
猟奇的な犯罪に仕組まれた異常な真相を、過去の暗い秘密に蝕まれた若い刑事は
暴くことができるのかーー。


とりあえず、最後まで読んで「な、なんだこれは」と言ってしまう作品です。
たしかに驚愕、たしかに異常。発想が突拍子もない。
間違いなく、誰でもあっと驚く真相でした。

でもちょっと冷静なわたし。

「これはびっくり箱です」と言われて、開けて驚くことはまあありえないので、
(せいぜい笑えるくらいでしょう)本作もそれに近いのか?と言ったらそれとはまた違う。

面白いのは発想と真相その一点のみで、ミステリとしては反則に近いと思いました。
猟奇的殺人という事件の特性は網羅しており、きちんと解決に導いてはいる。
だけど、犯人が○○○であればその動機もすべて何でもありになってしまい、
逆に言うなら「しっくり来てしまう」のですよ。
そこに驚愕、という感情は発生しないです。

喩えるなら、犯人が宇宙人だったとか。エスパーだったとか。手が10メートル伸びるとか。
だとしたら、ミステリである以上、なぜ宇宙人である必要があったのかとか、
手が伸びる必然性が物語と理論づけとしては欲しいわけで。


まあ読むべき点はそこではなく、刑事の活躍とか警察での確執とか、
恋愛要素の展開のうまさとか、登場人物たちの心理を楽しく読むことは可能。

自分は真相にしか注目できなかったので、好みの作品ではなかったということでしょう。
さりげにオススメしておき、この驚きの真相にいかなる反応をされるか。それを
期待したくはあります。