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死神の精度  (ねこ4匹)

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伊坂幸太郎著。文藝春秋。第57回日本推理作家協会賞受賞作。

CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。 (紹介文引用)
 
22.5.28再読書き直し。
 
6編収録の連作短篇集、まずは各編の紹介を。
 
「死神の精度」
電機メーカークレーム担当の一恵は、自分を名指しで指名しクレームをつけてくる客に閉口していた。驚きの喜ばしい結末。こんなめんどくさいことしなくても、、。
 
「死神と藤田」
ヤクザの藤田は、対立している組の栗木の命を狙っていた。弱気を助け強気をくじく、昔のヤクザ映画みたいな任侠道を貫く藤田、嫌いじゃない。ドタバタ劇と見せかけて、ちゃんとミステリーだな。
 
「吹雪に死神」
抽選で招待された洋館に集まった男女。ワープロに殺害予告が。。こういうやりきれない取り返しのつかない真相は辛いな。
 
「恋愛で死神」
洋服店店員の荻原は同じマンションの女性に片思い中。しかし女性にあらぬ誤解をされて。。イケメンすぎてメガネで顔をごまかしてる、っていうのが凄いな。勧誘の電話に応対するなんて、現代ではなかなかいないと思うので時代を感じるお話。決断に驚いたけど、千葉の言葉は初めての優しい「嘘」なのかもしれない。
 
「旅路を死神」
母親を刺し、通行人を殺害した若い男に車を乗っ取られた千葉。男は十和田湖に何か目的があるらしい。。色々と恵まれなかった人生なのかもしれないが、それを他人への刃で発散するのは間違ってるね。だからこういう結末なのかな。いいラストだと思うけどやりきれなくもある。
 
「死神対老女」
海の見える美容院で老女が髪を切ってくれる――それが口コミで広がり、色々なところからお客さんが来るようになった。しかし老女の人生はいつも死がつきまとい、残ったのは何十年も会っていない次男だけ。そこで老女が千葉にしたお願いとは。。
心温まるお話なのかなあと思ったけど、人生や人と人の関係の儚さもある。
 
以上。
死神の設定がいちいち面白いのでどんなお話にしても面白く読めるのでは。ミュージックが好きで、人間界に来るとCDショップに延々といるっていうのがお気に入り。ご都合主義のお話とは違って、決断が「見送り」一本じゃないのもいい。雨が降るのは千葉だけなのね。なんでだろう。