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猫丸先輩の推測 (ねこ4.5匹)

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講談社文庫。


猫丸先輩シリーズ、コレから急に講談社発行になりました。??
編入れるとシリーズ第4弾なのかな?
これは6編収録の短編集です。


今回はアルバイトものではありませんが、(4話目でひよこ売りはしますが)
れっきとした連作もの。ファンよ喜べうはうは。どうも第1話から第6話の間に1年の歳月が
流れている模様。。


この人の作品には本当にハズレがない。
人も死なないし、本作では事件すら起きていないものも多々あるけれど
謎の提示と登場人物の状況設定と猫丸先輩の登場のシチュエーションが本気で面白いのだ。
推理自体はこじつけだし証拠もないしひっくり返るような発想でもない。
タイトル通りの「推測」のオンパレード。(ひとつふたつ犯人の言質をとれているものも
あるけれど、見逃してしまうし)


安心して読める小説。
人が死なないという以前に、悪いことには決してならないだろうと信頼しながら読める。
だって猫丸先輩だもの。これを倉知淳という名前に置き換えてもかまわないけど。
読みながらも、悲惨なことには決してならないと知っているから。


理不尽な事件は誰にでも起きるのが世の中だ。
頑張ったって報われなかったり、病気になったり、他人が自分の想い通りにならなかったり、
大好きな人が離れて行ったりする。

しかし、
ほんの少しリドル・ストーリーの要素も感じるこの作品集では、どれも
明るい未来と日常の希望に満ちている。はっきりこうだ、とは書かれないまま終わるけれど。

きっとこの世界では怖い電報だって来なくなるし閑古鳥が鳴く商店街は復興するし
落ちこぼれデザイナーは成功するしいなくなったヒノマルちゃんだって見つかってしまうのだ。

猫丸先輩の世界に没入している間だけでも、それが自分の真実になればいいと思う。