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黄色い目をした猫の幸せ (ねこ3.5匹)

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高里椎奈著。講談社文庫。


『薬屋探偵妖綺談』シリーズ第2弾。
実は本作が著者の初投稿作だそうです。そのわりに、メフィスト賞受賞作
(デビュー作)との力の差は感じませんでしたが。


探偵を裏稼業にしている深山木薬店に、何を勘違いしたのか少年が殺人を依頼してきた。
もちろん断ったが、後日そのターゲットとされた方の少年がバラバラ死体で発見された。
発見者でもある店主の深山木秋にも容疑がかかるがーー。



探偵3人が妖怪であるということを除けば、普通の本格ミステリです。
面白くないわけじゃないけれど、今日びのミステリとして鑑みると明らかに
パンチ不足。
前作と違い、主人公が妖怪であることがあんま機能してなかったし。
(妖怪というより、単に人間に姿を変えられるほ乳類、という方がしっくりくるような^^;)

妖怪3人組の出会いや絆、友情か家族愛か、一線をおきながらもお互いを大事に
思っているようなそんな繊細な感情、その流れを楽しむ分には及第点。
クールな美少年、おっさんぽいイギリス産妖怪、癒し系泣き虫弟分、と
キャラの描き分けは完璧二重丸。それぞれの役割分担も理に適っている。

ただ、この作家がもう少し言葉の表現力があればなあとは思う。
出て来るキャラ一人一人はとてもいいのだから、
あと欲しいのはこの人にしかない世界観。
革命を起こせとは言わないが、単なるキャラ萌えで終わるのは惜しいものも
多少なり持ち合わせているだけにそこだけは切に希望したい。


しかし、出て来る葉山刑事がやたら秋に萌えまくって「かわいーーーっ」を
連発していたのにはまいった。
作者がいかに秋を持ち上げようとも、自分が好感を持ったのは
不器用で優しくて単細胞、リベザルなのですよ。