すべてが猫になる

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双頭の悪魔 (ねこ4.2匹)

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創元推理文庫


学生アリスシリーズ第3弾。

アリス率いる?英都大学推理小説研究会一行。アリスと同期であるマリアが
芸術家だらけの木更津村へ迷い込み、戻って来ない。
アリスらはマリアを連れ戻すため現地に趣き奮闘するが、
橋が濁流に呑まれ交通が断絶してしまった。木更津村側(江神・マリア)と
夏森村(アリス一行)に分裂し、双方が殺人事件に巻き込まれてしまう。
川のあちらとこちら側で起きた殺人事件の繋がりはーーー?


読者への挑戦が3度も挿入されているあたり、有栖川さんの意気込みが
感じられます。
この作品にはあまり言うことはないです。
設定からして、単純なようでいてよくこんな状況を思いついたもんです。
これが出て、多くの推理作家はくやしい思いをしたのではないでしょうか。
読者は2つの別の事件がどこがでつながるということは小説だから
分かっているのですが、さてはてどう関わりがあるのか。アリスと江神はいつ
その接点に気付くのか。読者と競争です。

私は例のごとく推理放棄してわくわくと真相まで読み続けるのですが、
3回もじらしてくれるんだからさぞこっちの肝をつぶすような真相が用意されて
いるのだろうと期待しまくり。
そして。

うおーーーー
おおーーーー
あくまーーー

良かった!このトリックはどの本でも読んだことない!!
読む時期は大事ですねえ、とお決まりのセリフを吐く予定でしたが。

これは有栖川さんの著作で3本の指に入りますな。いや、1番と言っても。。

天才でもないし、奇想ってわけでもないし、先駆者でもないし、
男前でもない。 ←それは関係ない
作品の全てが当たるわけでもないけれど、本作のように
全てのピースがぱちぱち嵌って1つの芸術作品が完成することがある。
そしたら物語背景を盛り上げる脇役達ーーー自然ーー雪の降る様であったり、
森のざわめきであったり、水の撥ねる音であったりーー&マリアとアリスの
ロマンスがまるで舞台を観劇したかのように物語を盛り立ててくれてしまうのだ。

有栖川さんの魅力をやっと見つけた。
(でも、短編はやっぱりどうかと思う^^;)