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怪人対名探偵 (ねこ3.8匹)

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芦辺拓著。講談社文庫。


森江春策シリーズです。

下校途中に何者かに誘拐された三谷駿くん。コスプレ・パーティーで<怪人>に
襲われた玲美。時計台の長針と短針に縛り付けられた男、気球による首吊り、、、。
次々と怪人の犯罪が勃発する中、森江春策は動き出した。
そして、小説の架空の人物であるはずの花筐城太郎とその助手、有明雅彦も登場し
物語は交錯する。
怪人の復讐とその正体とはーー?


この森江春策という人は大阪の探偵さんなのですね。
初めて読んだわけではないのですが、正直あまり印象に残らなかったので^^;。
改めて再確認。
……という私の態度からも察することができまするに、この探偵キャラはあまり
ぱっとしないというか。花筐や、怪人の方がよっぽど目立ってましたがな。
いいじゃん、ていうのは名前くらいかな。


タイトルからもその匂いがぷんぷんします通り、江戸川乱歩へ捧げる怪奇ミステリです。
こういう作品が、本家を凌駕することはまずない、と私は過去の引き出しから
承知した上で読んだわけですが。

ええ、それはその通り。
文章を模倣している部分と、著者の「地」の文、その差が露骨に浮き彫りになっていたので
そこは気をつけた方がいいと思う。別に敢えて旧字体を使ったり、設定を古くする必要も
ないけれど、もったいなかったなあと。
こういう企画のものを素直に楽しむのは、乱歩ファンには難しいかも。

しかし、自分はこれは面白かった。
京極夏彦のようにその時代ごと描き、本そのものから雰囲気を作り出す方法は、
著者の場合失敗すると思う。
敢えて現代に怪人!という突拍子もない設定に挑戦し、社会派と乱歩へのオマージュという
ごった煮料理を今風のトリックで味付けしたのがいい。

肩肘はって個性という言葉に縛られることなく、二番煎じに身を投じてみると
はみ出した部分が著者のオリジナリティとなって出現した、という感じかな。

まあ、結果論だけど。