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犬はどこだ (ねこ3.6匹)

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米澤穂信著。東京創元社ミステリ・フロンティア


犬捜しを専門とした探偵事務所を開業した25歳の青年、紺屋。
彼の前職は銀行員。まっすぐなレールの上を順調に歩いて来た紺屋だが、
就職してからトラブルに遭い、内に精神的な悩みも抱えていた。
調査事務所を開いた当日、最初の依頼人がやって来た。しかし、依頼内容は
「人捜し」。さらに追い打ちをかけてやって来た二人目の依頼人は、
古文書の解読をやってくれと言う。
学生時代の後輩、半田が突如乱入、雇用し、二つの依頼を同時に引き受けた紺屋だが、
一見無関係な二つは微妙な繋がりを見せ始める。


文章は今までで一番良い、と思う。
読みやすさ、簡潔さが健在のまま、ちょっとお洒落で辛子も効いている。
紺屋の過去の苦悩も明確に伝わってくるし、お調子者かと思われた半田のキャラも
いい味出していてシリーズ物になれば人気が出そう。
好き好き。

しかーーし、(またかぃ^^;)
なぜ、犬捜し??という根本的な部分が曖昧どころか全く描かれていないのは
どうしてだろう。お好み焼き屋のエピソードがないぐらいならかまわないけど、
タイトルにまで「犬」を冠しているのだからもう少しそこに小説としての
説得力が欲しかったかも。
だから、クライマックスの紺屋の最後のセリフがどうも響かなかった。
つながったのかつながらなかったのか。はてはて。
うーん、こういう所で、どうしても読みながら伊坂幸太郎と比べてしまう。
(接点を感じたので)


主人公が、成長したんだか単に復活したんだか、というのがこのラストでは
わかりにくい。その動機が、自分の過去との共通点=共感、という1点だけでは
ちょっと。。


二つの謎がじわじわつながっていく、そのじらされる感じは見事だった気がする。
敢えて、ラストは佐久良さんとの緊迫のシーン!というのが排除されていたのも
計算された技術かもしれない。

もし、今後本作がシリーズとして刊行されるならこういう「結」の形もありかも。
(「転」がなかったけど^^;)