T大学大学院生の簑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?「幻惑の死と使徒」と同時期に起こった事件を描く。(裏表紙引用)
20.11.11再読書き直し。
S&Мシリーズ第7弾。
偶数章だけで構成された物語で、前作「幻惑の死と使徒」と同時期に起こった事件を萌絵の友人・杜萌の視点で描く。萌絵と犀川さんの登場は比較的少なく、二人のファンとしては少々物足りないかな。シリーズ中でも突出した幻想的な雰囲気と、特徴的なトリック。別々に誘拐、監禁された簑沢一家、犯人の死亡、行方の分からない美貌の兄、もう1人の犯人の存在など謎の提示としてはかなり魅力的でワクワクする。再読ゆえ多少記憶があったせいかもしれないが、兄についての秘密はだいたい予想がついた。しかし真相についてはとても悲しく残念なもので、読んでいて辛い。
以下ネタバレ↓
ラストの兄の登場について。これは兄は実は生きていたということでいいのだろうか。簑沢の家族は、殺したと思い込んでいる杜萌を気遣っていたということだろうか。