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さよなら妖精 (ねこ2.5匹)

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米澤穂信著。東京創元社ミステリ・フロンティア


1991年。守屋は、友人のセンドーと共に、雨宿りをする異国の少女と出会う。
行く所がないという「マーヤ」に惹かれ、守屋はまた旅館の娘である友人の白河の家に
居候させることを提案。ストイックな友人、文原と共に、5人はマーヤが帰るまでの
2ヶ月間、行動を共にすることになるがーー。


ジュブナイルだとかライトノベルだとかいう前知識があったのですが、
これはどっちもそぐわないのでは??もちろんジュブナイルとしては十分通用しますけど。
ユーゴスラビアの情勢の記述なども、簡潔ですし特に知識はなくとも楽しめます。

個人的には、期待はずれだったこの作品。
評価が高いのでちょっと混乱してます、私。ふはは^^;

本作は、登場人物に好感が持てないと入り込めない性格の小説ではないでしょうか。
守屋というごく普通の少年と、達観してクールなセンドーの組み合わせがどうも
アンバランスに感じたし、白河さんはマーヤと同居という重要なポジションにいながらも
あまり出て来ないし、マーヤはマーヤで熱心で志の高い素敵な女性なんですけど
自分は好きじゃない。

結局、自分が一番共感できたのは文原だったのでした。(それじゃ無理だわ…)

以下、内容に触れます↓







何かに熱くなれ、行動しろ、というテーマを扱っていながら、
主人公が結局何も行動せず、何も得ない。これでは文原の方がまだ説得力がある。
何かをしよう、とカラ決心したもののやはりマーヤには拒絶される。当たり前ですね。
ユーゴスラビアに行け、と言いたいわけではないです、念のため。
惹かれているのはマーヤという人間に対してであり、ユーゴスラビア情勢に対して
ではない。一歩踏み込めなかったのは、背負っているものの決定的な違いを自覚して
いるからでしょうか、結局。
マーヤが、守屋の気持ちに気付いていなかったとは思えない。
例えが低俗すぎますが、自分に惹かれていると言われそれを理由にミステリーを
読まれても困ってしまいます。順番が、違う。



しかし、守屋くん、いい恋愛をしたのではないでしょうか。
まっすぐなものに惹かれるその心を持っていれば十分では。
そう思えば、最後までわからなかったこの素敵なタイトルも意味がある。

恋愛小説としてなら完成しているかも。自分の感想はそれだけに留まってしまいました。