すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

白昼蟲 (ねこ3匹)

イメージ 1

講談社ノベルス

<「ハーフリース保育園」推理日誌>シリーズ第2弾~。


次郎丸の友人の住むぼろアパート、「平和荘」で殺人事件が発生した。
偶然にもその現場を望遠鏡で目撃してしまった次郎丸は、現場に急行したが
なぜかあるはずの死体が発見されなかった。
一癖も二癖もある住人達には、いじめ、自殺、色々な問題があった。
その事件は、次郎丸の暗い過去ともリンクしていくがーー。


次郎丸の隠された重い過去が判明し、この物語で発生したテーマ、事件と
深く結びついて行きます。家族の絆、愛情、友情の繊細な痒い部分が
見事に描写され、身に覚えがなくとも思わず共感し、惹き込まれていく。
文章が上手とは言い切れませんが、くろけんの心理描写は緻密でそれでいて
さりげなく、卓越していると思います。

全体的にかなり重く、辛いお話ですが、やはりラストに一筋の光が配置され
読後感は決して悪くならない。ただ、動機などはちょっと好きではありませんが。。


ミステリとしては前作に比べちょっとお粗末な印象。
トリックの全てが、「いや、だったらこうすれば…」というツッコミを入れたくなる。
やたらと挿入されている、読者への手がかりである数々の「図」。これも、
ちょっと一部卑怯(はっきり言えばアンフェアかと…)なものがあった気がします。

謎解きに重点をおかず、登場人物が事件を通じて成長し、移行していく心を
楽しく読めたならそれでOK、そんなシリーズかも。