すべてが猫になる

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笑殺魔 (ねこ4匹)

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講談社ノベルス


「ハーフリース保育園推理日誌」シリーズ第1弾です。

幼児図書の営業マン、次郎丸は、営業に来た「ハーフリース保育園」で
大学の後輩、みどりと再会する。そして若くて美形の園長、エキゾチック・ビューティー
山添女史の登場。
保母の一人、雪村先生と園児+その母親との騒動に巻き込まれ
怪我を負った次郎丸。災難は続き、自宅に帰ると家が全焼、園長の好意で保育園に
仮住まいをすることになった。
そして発生した園児誘拐事件。犯人は、過去に深い傷を持ち園児に笑いかけることが
できなくなった雪村先生を現金運搬役に指名するがーーー。


記述者役が存在しないので「推理日誌」という冠は合わないような気がしますが、
そんなこたどうでもいいくらい気に入ってしまった作品。

まず、キャラがいい。全員いい。次郎丸以外は。
お茶をいれるのがうまく、のほほんとしたボケ役のみどりちゃん、
ファッションモデルかと見まごうハーフ?の園長、
頭脳明晰、冷静、クールだけど日本語がおかしい山添女史、
子供大好きなのに、自分が笑うと園児が呪われると豪語する雪村先生、もろもろ。

ストーリーは暗い、重い、辛いの三拍子。じゅるっっ(よだれ)。
それとは対照的な、生き生きとした文章と登場人物達の会話。

謎解きなんてどうでもいい、完全にストーリーに惹き込まれてしまいました。
この暗いお話を緩和させているのは間違いなく山添女史の存在で、
緊迫した場面でもけったいな日本語を大真面目で使うもんだから
おかげで「ああ、きっと子供は助かるんだ」という安心感を持って読めるのです。(真相は秘密)


本来、重みのある事件に対し、登場人物がふざけたりギャグをはさんだり
ゲーム感覚であったりする小説は好きではありません。
まさに本作はそれのど真ん中であるわけですが。。
なぜか腹が立たない。
それは、不器用ながらも休息を挿み、絶望に徹することのできない黒田研二
優しさが確かにそこにあるからでしょう。