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地獄の奇術師 (ねこ3.2匹)

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二階堂黎人著。講談社文庫。


女子高生探偵、二階堂蘭子の友人、暮林英希の住む十字架屋敷に、顔を包帯で
ぐるぐる巻きにしたミイラ男が出現した。自分を「地獄の奇術師」と名乗り、
過去の復讐のために一家を皆殺しにするというのだ。
地獄の奇術師の復讐とは何か?予告通りに起きる連続殺人事件の犯人とは?


二階堂蘭子シリーズ第1弾、ですが、実際は「吸血の家」と同時期に書かれた作品、
ということらしいです。元々は、「死亡の座」とかなんとかいう短編だったとのことですが。。
(題名違ってたらすいません^^;)

元々二階堂さんへの予備知識があり、なぜかシリーズ全部すっとばして「悪魔のラビリンス」を
読んだ記憶があるのですんなり入り込めました。
なんといっても江戸川乱歩を読んで育った私、「おいおい、乱歩の足下にも及ばんぜ」となるか
「乱歩風でいいじゃないか」となるか。これは幸運にも後者でした。ほ。

ミス・マープル以外の女性探偵はいけ好かないキャラが多くて抵抗がないこともなかったですが、
蘭子さんはまだ好きな方かな。警察からの蝶よ花よの待遇も、別に
わざわざ突っ込むのはしんどいですし。
難を言えば、殺人事件を目の前にして既存の探偵小説の作品名をわざわざ挙げて
講釈するのがうざい。。ネタバレはしてないけど、邪魔です。。。知ってる人間には
それで一つの可能性が断たれるわけで、なんかいちいち読者に「言っとくけどあのトリック
じゃないよ」と念押しされるよう。


犯人がのっけから怪しすぎるのと、トリックが今ひとつだったのは残念ですが、
動機がつぼ中のつぼでした。これで全てが許せるくらいです。


ここまで古典の模倣をしてしまうことに抵抗を感じる読者もいるでしょうが、
昔ブレイクしたアイドルが20年経って苦笑の再結成をするのとは訳が違うし、
童心に帰って素直に楽しむといたしましょう。