すべてが猫になる

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名探偵外来 泌尿器科医の事件簿  (ねこ4匹)

似鳥鶏著。光文社。

「なんでこんなになるまで来なかったんですか…」泌尿器科医・鮎川のもとには今日も多くの患者が訪れる。中には、羞恥心から嘘をついたり、人に言えない秘密を抱えている人も多く……。泌尿器科ならでは多様な謎に真摯に向き合う鮎川。元ヤンキーの看護師長、忍者のようなソーシャルワーカーなど心強い仲間たちとともに病と事件の早期解決に挑む! (紹介文引用)
 
以前べるさんの記事を読んで興味を持った作品を。似鳥さんの本は2冊ほど読んだことがあるのだが、読んだことのあるその2作品が全然系統が違った気がする。そしてまたこの作品も、似鳥作品イメージの全く固まらないものであった。
ただ、めちゃんこ面白くて好みだった。泌尿器科医が探偵役となったミステリーというのは聞いたことがないし、なにより自分が受診したことのない科なので興味が尽きない。
 
「僕の体には呼べない一部がある」
13歳の少年のあの部分に、火傷のような傷があった。次回来診したときには凍傷ができており、鮎川らは虐待を疑ったが。。
こんな理由だったとは。いかにも中学生が陥りそうな行動であるし、この事件を起こした犯人には憤りしかない。明らかに人間として欠陥があるし、こういう悪意を持った人間が普通に社会に存在していることが日々恐ろしい。
 
「膀胱彷徨」
中学生の夜尿症と不登校に因果はあるのか。「賢母力」をアピールする母親の行き過ぎた教育とは。
明らかに「親ガチャ」に失敗した例ではあるものの、少年の行為は許しがたい、可哀想なだけに物語にするなら別の解消法にして欲しかった。言いたいことは全部師長が言ってくれたのでスカっとしたが。
 
「或る崇拝者の最期」
40代の営業マンが、自分の大事な部分の根元に良からぬモノを嵌めてしまい、やがて敗血症性ショックで手術することになった。予後は良好のはずだが男は術後も激しい痛みを訴える。
私は女性だが、これは男性がなったら相当キツイだろうなと想像できる。この男は女性蔑視が酷く人格にも問題があるのだが、悪いことをしてケガをしたわけではないからね。
 
「予算の都合で死ね」
透析センターを占拠し、患者や医師を人質にとった男はユーチューバーで、占拠の様子を生配信し始めた。
いきなり毛色が変わって大事件モノに。。ちょっと戸惑った。銃とか出てくるし。この犯人のように実行まではしないかもしれないが、世にいる迷惑系と言われる連中やヘイトどもはこういう精神世界で生きているのだろうな。そんな風にしか生きられなくて逆に気の毒ではあるが、そういう人たちにも鮎川先生がこういうふうに説教して欲しいね。
 
以上。
中には泌尿器科である必要はないものもあるが、まあいいとして。ケースワーカーの忍さんや大神師長など、マンガのようにキャラが立っていて面白かった。間違った人間や考えにカツを入れてスカっとさせる展開なのも良かった。泌尿器科モノではあっても差別問題を大きく主張しているし、男性の弱い部分やダメな部分を見せつけてくるので意外と男性が読むとうんざりしちゃうかもね。
 
似鳥さんもっと読みたい。実はずっと気になっていた動物シリーズ読んでみようかな。他にオススメあればぜひ。。