すべてが猫になる

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光のとこにいてね  (ねこ4.2匹)

一穂ミチ著。文藝春秋

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。 彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。 どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。(紹介文引用)
 
一穂さんの話題作をやっと読めた。分厚くてビックリしたけど、今年一番夢中になってのめり込んで読んだ本かもしれない。めっちゃ好き、とかすごく面白い、とかではきっとないんだけど、結珠と果遠の関係のゆくえが気になってやめられない感じ。
 
毒親のもとに育った2人が、7歳で知り合って友だちになって、15歳で再会して名字で呼び合うようになって、29歳でまた再会してお互い既婚者で大人の距離感が生まれて、、。別れてもお互いを忘れられず、再会しては子どもの時のようにまっすぐにお互いを求められず、だけど奥底では2人とも相手のことを思っている、っていう歪で苦しくて、もどかしい関係。恋愛関係とも言い切れない、友情にしては暑苦しい、分かるようで難しい2人。
 
まあここまで複雑な人生を歩むことはなかなか稀有だと思うけれど、それぞれの年齢ゆえのこの複雑な感情だけは共感できなくもないかな。お互いいい伴侶がいたり子どもがいたりするけれど。2人の夫がいい人だからこそ、お互いが選んだ結末を手放しでは喜べなかった。だけどこういう小説でありがちな選択をしなかったことで、やっと報われたのかなあとも思えた。決して読後感は悪くない。2人とも、いくら家庭環境がアレとはいえ(特に結珠の母親の人格はやばかった)もうちょっと器用に生きられないのかな、ともどかしくも思う。だけど結珠も果遠も決して「いい人」ではなく、人間らしかったのが1番良かったな。