すべてが猫になる

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人間に向いてない  (ねこ3.8匹)

黒澤いづみ著。講談社文庫。

「今年(2018年)読んだ本の中で、私のベスト3に入る1冊!」――宮部みゆき(単行本帯コメントより) 話題騒然のメフィスト賞受賞作。読者から届いた熱い、熱い声。続々重版出来。 子供を殺す前に。親に殺される前に。 すべての「向いてない人」に捧ぐ、禁断のオゾミス、または落涙の家族サスペンス! 一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる奇病「異形性変異症候群」。 この世にも奇妙な病が蔓延する日本で、家族は。 ある日、美晴の息子の部屋を、気味の悪いクリーチャーが徘徊していた。 ――冗談でしょう。まさか、うちのユウくんも・・・!!?? そこから平凡な家族の、壮絶な戦いが幕を開ける。(裏表紙引用)
 
第57回メフィスト賞受賞作。
メフィスト賞、さっぱり読まなくなっちゃったなあ。先日たまたま読んだ「ゴリラ裁判の日」がとても面白かったので、これを機にまた注目してみようかなということで、これまたたまたまネットで知ったこの本を。宮部さんが絶賛してるし、本屋大賞健闘作品だし、未来屋小説大賞という賞の大賞受賞作品でもあるらしい。全然知らなかった、文庫化してるってことは3年以上前に話題になったってことだよね。
 
で、内容。
ちょっと文章に難はあるし登場人物の台詞や価値観が古臭くステレオタイプではあるものの、読みやすかったのでサクサク読めた。カフカの「変身」(10代の頃読んだ)を彷彿させる設定もなかなか。ニート、引きこもり(同じか?)の若者を中心に蔓延する奇病、「異形性変異症候群」。ある日突然自分の子どもが昆虫や人面犬や得体の知れない肉の塊に変化する――原因不明、治療不可能。政府は変異者を死亡扱いすることを決定した。平凡な主婦、美晴はある日突然最愛の息子優一が昆虫に変身してしまい狼狽する。どんな姿であっても息子を守り愛すると決意するが、夫は息子を気味悪がって諦めてしまった。孤独になった美晴だが、ネットで「みずたまの会」という変異者を家族に持つ人々のための会があることを知り、入会する――。
 
まあ色々と、実際にこういう奇病があったら、子どもが変異者になったらこうなるだろう、と想像する範囲内のトラブルや困難が起きる。気になるのはやはり優一たちが最後は元に戻るのか、子どもを殺してしまった親たちがどういう形でケアされていくのか、美晴の夫は最後に理解を示すのか。思っていたよりハートウォーミングでもあり、残酷でもあり。みずたまの会が崩壊してからの展開がスピーディで、意外性もあり、なかなかの出来。美晴があまりにも理想の母親像として持ち上げられてる感が(人間としては人並みに難があるが)あまり好きではなかったけど。