すべてが猫になる

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コロナと潜水服  (ねこ4匹)

奥田英朗著。光文社文庫

早期退職を拒み、工場の警備員へと異動させられた家電メーカーの中高年社員たち。そこにはなぜかボクシング用品が揃っていた――。(「ファイトクラブ」) 五歳の息子には、コロナウイルスを感知する能力があるらしい。我が子を信じ、奇妙な自主隔離生活を始めるパパの身に起こる顛末とは?(表題作) ほか “ささやかな奇跡”に、人生が愛おしくなる全5編を収録。(裏表紙引用)
 
奥田さんの文庫新刊は5編収録の短編集。
全てが単独の話で繋がりはないのだけど、内容が不思議系で「ほっこり、じんわり」するっていう共通点がある。どれも面白くて楽しめた。
 
「海の家」
小説家の村上は、妻の浮気が原因で神奈川県の海の家を借りていっときの別居を決意。古いが広く眺めの良いその家での暮らしを村上はとても気に入っていたが、ある日から家の中で子どもの足跡が聞こえるようになり――。
すごい勝手な奥さんだな^^;結局ただの夫婦喧嘩だったってことかなあ。まあ娘さんとはいい関係みたいだし良かったね。
 
早期退職に抵抗したら危機管理課に飛ばされ工場内警備員をすることになった三宅。家族のために我慢の日々だったが、倉庫内にボクシング用品が一式揃っていたことから仕事仲間と共にボクシングを始めることに――。
長年真面目に大手で頑張ってきたのに、この会社は社員をないがしろにするんだね。でもコーチの出現によりめきめきボクシングの腕を上げて上達して、窃盗団に立ち向かっていく展開に胸が熱くなった。今後も続けて欲しいなあ。
 
「占い師」
フリーアナウンサーの麻衣子は、年収がいいからという理由で交際していたプロ野球選手がブレイクしたことで鼻高々だった。しかし売れすぎるとヘンな虫がつく。迷った麻衣子は占い師のもとを訪ねるが――。
トロフィーワイフだのスペックだの、そういう世界線で生きている人たちのお話。何の共感も同情もしないが、面白くはあった。もうちょっとスカっとしたかったけども。
 
「コロナと潜水服」
新型コロナウイルスの蔓延により、テレワーク勤務となった康彦。どうやら5歳の息子にウイルスの検知と予知の能力があるらしい――。
まさにリアルコロナ闘病記。緊急事態宣言が初めて発令された頃の東京が舞台なので、あああの頃こうだったなあ、と思い返しながら。こんな時期に講習開いたり、マスクなしで大声出したり、、こういう人いたよねえ、きっと。潜水服で公園とか笑っちゃったけど、効果あるだろうなあ。奥さんが妊娠中なのにやたら呑気でどういうことだろう?と思っていたら、、なあるほど、そういうことか。
 
「パンダに乗って」
小さな広告会社社長の小林は、子どもが巣立ったことを機に憧れのフィアット・パンダを購入。新潟の中古屋まで車を引き取りに行くことになったが、それが思わぬ体験で――。
フィアット・パンダが分からなかったので(フィアットと打ったらパンダまで出たのでおおってなった)検索してみた。確かにカワイイ。元の持ち主の人生をなぞる旅に思わず感動。持ち主が人に好かれていたからこそだね。これが1番良かったなー。
 
以上。
「占い師」だけはちょっとイラっとしたけど笑、全部とても面白かった。奥田作品にはちょこちょここういう当たりがあるから外せない。なんだか優しい気持ちになれたな。最終作がパンダで良かった。