すべてが猫になる

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雨の日は、一回休み  (ねこ3.9匹)

坂井希久子著。PHP研究所

おじさんはひどい。でも、おじさんだってつらい⁉ 男性は「そうなんだよ」と共感、女性は「こんな人に困ってる! 」と思わず頷く物語。報われない「おじさん」たちの心情を時にコミカルに、時に切なく描き出す、連作短編集。(紹介文引用)
 
初読み作家さん。べるさんのところで紹介されていて気になっていた本を読んでみた。
バブル期や団塊世代を生きた、現代の価値観に染まれない迷惑おじさん達の悲哀と希望を描いた5編収録の連作短編集。
 
「スコール」
保険会社中間管理職の喜多川は、普段から身の振り方に気をつけているにも関わらず部下にセクハラを指摘された。自分には全く身に覚えがない。一体誰が俺を告発した?
どう読んでも発言や行動に問題ばかりの喜多川、本人だけが気付かないのが哀れ。でも当時はこれが当たり前だったんだよね。やっと新人や女性にとって風通しが良くなったのだけど、反面おじさんは大変だ。
 
「時雨雲」
喜多川の上司、部長の獅子堂のお話。全盛期は取引先に買春ツアーのアテンドをしたり、同僚と睡眠時間の短さを競い合ったり。女子社員だけがお茶くみや掃除を始業前に義務付けられていることに疑問さえ感じない。まあそのツケが回ってきたと言ったら言い過ぎだろうか。妻や女性の上司が自分より活躍していることを受け入れられないダメダメおじさんだけど、この気持ちの入れ替え方は良いね。
 
「涙雨」
獅子堂が参加していたライフプランセミナーで女性の指導者に悪態をついていた男・佐渡島のお話。女性にわざと肩をぶつけて歩いたり、性〇〇でカッコをつけるために薬を不法な手段で手に入れたり。1,2作目とはかなりダメおじさんのステージが違うので嫌悪感しかなかった。ここまでの男性が心を入れ替えるっていうのが現実ではあり得なさそうだけど、自分のヤバさに気づけただけ良かったと思う。こういうのって気持ち次第だから。娘と仲良くできるかどうかまでを求めるのは贅沢かな。
 
「天気雨」
佐渡島の勤める不動産会社派遣社員の石清水のお話。
こちらもかなり屈折している。SNSで女子高生のフリをしてかなり痛い目に遭ってしまう。まあ読んでいて清々はするけど。。まあ色々と人生大変だとは思うが、全部八つ当たりの勘違いだからねえ。。こんな物分りのいい女子高生がいるのかは置いといて。
 
「翠雨」
「翠雨」この言葉は初めて知った。
前作にチラっと出てきた、迷惑な「世直しおじさん」小笠原のお話。自分を正義だと思い込んで街中の人に恐怖を与える小笠原。奥さん厳しいけどこれでも優しすぎると思う、私なら夫がこんなことをしていると知ったら秒で離婚ですわ。でも心を入れ替える方法として、5作の中で1番正しいやり方だと思った。運動ってストレス解消にもなるから。
 
以上。
文章にクセがなくて読みやすかった。これで終わり?と思ってしまうお話もあるけれど、2話目や5話目などはスッキリ違和感なくまとまっていたし。3,4、5話のおじさんはほぼ犯罪者だけどね。。この中に出てくるおじさん達はみんな改心するので気持ち良かったかな。現実はこんなことないと思うから。がむしゃらに働いてきて、人生の最後がコレって可哀想だな。まあ、こういう好き勝手にやってきた人たちが代償を払わされる時代が来たということで。