すべてが猫になる

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レッドクローバー  (ねこ3.7匹)

まさきとしか著。幻冬舎

家族が毒殺された居間で寛ぎ ラーメンを啜っていた一人の少女。 彼女が──家族を殺したのではないか。 東京のバーベキュー場でヒ素を使った大量殺人が起こった。記者の勝木は、十数年前に北海道で起こった家族毒殺事件の、ただ一人の生き残りの少女――赤井三葉を思い出す。あの日、薄汚れたゴミ屋敷で一体何があったのか。 「ざまあみろって思ってます」 北海道灰戸町。人々の小さな怒りの炎が、やがて灰色の町を焼き尽くす――。(紹介文引用)
 
2022年に上梓されたまさきとしかさんの大長編。
イヤミスの代表、みたいなイメージがついてきたかな。本作は2つのヒ素毒殺事件を暑かった長編ミステリー。12年前に北海道灰戸町で起きた一家殺害事件と、現在豊洲バーベキュー場で起きた大量殺害事件。過去の事件の犯人は捕まっておらず、一家の生き残りである赤井三葉が犯行を疑われていた。豊洲事件の犯人は丸江田という30代の男で、動機もヒ素の入手経路もハッキリしない。2つの事件に繋がりはあるのか――出版社嘱託職員の勝木が事件を調査する。
 
過去と現在が交差し、語り手が家族に恵まれなかった2人の少女三葉とちひろ、勝木、ちひろの母親久仁子、灰戸町の住人など目まぐるしく変わる構成。家族に虐待を受け、町の住人からも村八分にされる三葉と母親に見捨てられ祖母と暮らすちひろ。2人の少女の心の痛みや屈折がリアルで痛々しい。町の住人もイヤな人間ばかりで、2人の悪魔を育てたのは自分勝手で醜悪な全ての大人たちなんだということをむざむざと見せつけられる思い。現在の事件の犯人である丸江田の体験や心理もかなり異常で性質もサイコパスなのに、それが薄まって感じられるぐらい。
 
過去の事件の方が本質かも。実際には何があったのか、誰がどういう人生を歩んできてこういう結末になったのかが明かされ、それでもやはり救いはなかった。「殺される前に殺す」という過激なワードが自然に自分自身の栄養になるような、そんな人生を生きざるを得なかった人々の哀れな物語。長かったが飽きずに読めた。