すべてが猫になる

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雪の花  (ねこ3.7匹)

秋吉理香子著。小学館文庫。

列車に飛び乗り、上京して40年。何もかもが夢のようにうまくいっていたバブル期の輝かしい栄光は過去のものとなり、経済的な困窮に陥った夫婦が、死を覚悟して帰郷する。人気のない故郷。真っ白な雪に埋もれた母校でふたりが見つけた希望とは?バブル崩壊、不景気、リストラ、経費削減など、社会の大きな流れの中で人生を左右される人々の苦悩の日々と切なさを描き、第3回ヤフー・ジャパン文学賞を受賞し、ドラマ化された表題作を収録。離婚で離ればなれになった親子の絆や仮面夫婦の成れの果てを綴った作品など、涙を誘うヒューマン・ノベル四篇。(裏表紙引用)
 
秋吉さんのデビュー作。初期はどんなもんかな、と思って読んでみたが、これデビュー作?と思うぐらいにはなかなかのレベル。人の心をさまざまな形で打つ4編収録の短編集。
 
「女神の微笑」
価値観の違い、妻の不倫の果てに離婚し妻に引き取られた13歳の娘。思い出の場所で娘と過ごす父親は、幸せに暮らしていると思っていた娘の本心を知る。
この父親もちょっと情けないところはあるけれど、妻の性格にもかなり難が。。娘のためじゃなくて自分のためじゃないの。あの母親を言い負かすには相当の意志が必要だと思うけど、頑張って欲しい。
 
秘蹟
還暦を迎えた夫婦に訪れた破局キリスト者となった妻は従順でおとなしく、夫の両親の介護を黙々とこなしてきた。ある日突然行方不明となった妻を夫は探し続けるが。。
いかにも昭和の夫の悪いところを全部備えたような最低最悪の夫。よくまあ逃げずに我慢したもんだ。こういうのって、この年になるまで我慢した妻の方にも言いたいことがいっぱいあるわ。夫は今ごろ気づいてももう遅すぎるよね。
 
「たねあかし」
三十路を過ぎた真面目なだけの地味な女性に社内で人気の若いイケメンが交際を申し込み、幸せな日々を過ごしてきた。だが自分に自信のない女性は恋人への猜疑心を膨らませる。。
女性が恋人に宛てた手紙形式の小説で、この恋愛と現在の境遇がいかにしてもたらせられたかを語る体裁。コワすぎる。。現代の30代なんてまだまだ若いし(前半か後半で違うかもだが)、そこまで疑心暗鬼にならんでも。と思う。原因はそこだしなあ。
 
「雪の花」
事業に失敗し、心中を決意した夫婦。かつて育った、今では消失してしまった町へ向かう。
これ、映像化してるんだってね。この作品だけ妙に短くてあっさり終わってしまった。美しく前向きないいお話。
 
以上。
秋吉さんは初期の方がいい作品多いのかもなあと。イヤミスの片鱗もあるし、感動もあるしちょうどいい塩梅で結構好みだった。