すべてが猫になる

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刑事弁護人  (ねこ3.5匹)

薬丸岳著。新潮社。

ある事情から刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こしたホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の西と弁護にあ たるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。 そして最後に現れた究極の存在とは……。(紹介文引用)
 
刑事弁護人を語り手に取った薬丸さんの大長編。
 
父親が弁護をした事件の加害者の母親に殺された過去を持つ凛子が女性警察官・涼香の殺人事件を担当することに。凛子が殺人事件を担当するのは初めてなので同じ弁護士事務所の西と共同戦線を組む。涼香は被害者を殴ったことは認めたものの、殺意については否認。不合理な供述を繰り返す涼香だが。。
 
う~ん。長い(笑)。ちょっと詰め込みすぎでは。西にも凛子にも複雑な過去があり、さらに涼香が過去に関わった児童殺害事件まで掘り下げてくる。ストーリーやキャラクターを作り上げる上では必要かもしれないが、きっちりきっちり細かく描写している上に何度も同じところに戻って情報を小出しにしてくるため、いいかげんダレてしまった。
しかも涼香が凛子と西を信用しておらず、解任を求めてくるあたりイライラする。凛子たちが調べた事実で揺さぶりをかけるたびに激高して否定したり結局認めたりと、信用できないのはアンタのほうじゃ~~~と叫びたくなる。まあ色々事情があったんだけどね。
 
丁寧で重厚な作品だとは思うが、加害者を弁護する意義を問うまでの地点には到達しておらずモヤモヤが残った。
 
以下、物語の詳細に触れています。未読の方はご注意。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
被害者があまりにもクズ人間だったため、被害者の母親の叫びや裁判員の言葉が全く響かず違和感ばかり残った。被害者は兄ばかり可愛がる母親を恨んでいたという事実と、息子を溺愛していたかのような母親の立ち居振る舞いがどうにも結びつかない。裁判員の発した、母親の立場ならば息子が女性を暴行しようとしたと聞いたら傷つく、みたいな言葉も(捏造はダメだが、そもそももっと酷い犯罪を犯している)どんな息子でも母親は息子を絶対的に愛するものだという古臭い「母親神話」を前提にしている気がして。
 
あと、涼香の正義感が強く真面目な警察官だという人物像にも疑問が。。こういう理由で資格を持たない若い男性ベビーシッターに自分の子どもを預けるなんて普通の感覚ではないし、浅はかとしか言いようがない。優先順位がおかしい。そもそも、なぜ通報するべきところで通報しなかったのか。。
 
 
 
 
 
 
どうもそういうブレが色々と障害になって楽しみきれなかった。う~ん、最近の作品どうもダメだな。。要所要所にあるルッキズム発言も気になるし離れるかも。。