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忌名の如き贄るもの  (ねこ4.2匹)

三津田信三著。講談社文庫。

生名鳴地方虫絰村に伝わる「忌名の儀式」。自らに降り掛かる災厄をすべて実体のない忌名に託す儀式の最中に、村の有力者・尼耳家の跡継ぎが殺される。「決して振り向いてはいけない」儀式中に右目を刺され命を落とした被害者。時同じくして目撃された異形のもの、”角目”。村を訪れた刀城言耶が事件の謎に挑む。(裏表紙引用)
 
ジーパン探偵・刀城言耶シリーズ第11弾。
 
今回の刀城さんは友人の仲を取り持つため、生名鳴地方の虫絰村へ向かう。友人の婚約者・李千子の弟が忌名の儀式の最中に亡くなっており、葬儀にも参列する。被害者は右目を刺され殺人の疑いが濃厚。言耶は調査に乗り出すが…。
 
なかなかに今回も古めかしく怪しい田舎の風習が事件を彩っている。忌名を呼ばれたら振り向いてはいけない…という怪談では定番の脅かしではあるものの、やっぱりコワイ。ミステリー的には村独特の地形や要所が全体的に大きな密室状態となっており、順番に通りがかった人々を時系列にまとめアリバイを証明していく段階が読みどころ。その全員を目撃していた人物がいる設定さえもこの地方ならではの納得のいく状況や人間心理を用意しており、このあたりはさすがだなあと。
 
しかしいつもに比べ推理が二転三転しかせず(毎回四転五転するので)、ややこしくはないが物足りなさが否めない。四転五転の時はさんざん文句を言うくせに勝手なもの。。と思っていたらラストで身も凍るような真相が明かされ、腰を抜かしたのであった。有り得ないし悍ましい動機と真相なのだけど、こういうのは好きだなあ。これぞ人間というものの真髄という感じが。